「The Best of Milligan & McCarthy」読了

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イギリス出身のコミックライターであるピーター・ミリガンと、アーティストのブレンダン・マッカーシーがコンビを組んで70年代後半から80年代にかけてさまざまな雑誌に掲載していたコミック作品の傑作選。

ブレンダン・マッカーシーのアートの素晴らしさは過去にも書いたが、インド絵画に影響を受けたという強烈にサイケデリックなアートが大きめのページで堪能できてもう満足。各作品のストーリーもアートに合わせてトリッピーで、当時のイギリスの労働者階級文化を反映したものから、哲学的なものまでと扱ってる幅が広い。「ROGAN GOSH」と「SKIN」を除けばどの作品も1話数ページで、おまけに掲載されてた雑誌が長続きせずに尻切れトンボで終ってるものばかりなのだが、その凝縮されたストーリーはいずれも読み応えがあるかと。いくつか代表的な作品を紹介すると:
「PARADAX」
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物質を通り抜けられるスーツを手に入れ、スーパーヒーロー「パラダックス」となったニューヨークの少年の物語。ヒーローと言いつつもチャラくて自分のことしか考えておらず、周囲につつかれて仕方なく悪と戦うそのスタイルは、グラント・モリソンの「Zenith」(あれもキャラクターデザインはマッカーシーだった)の先駆けといったところか。実際マッカーシーは「Zenith」をパクリだと考えてるらしい。

「ROGAN GOSH」
これ以前にDCコミックスのヴァーティゴからも再販されてましたね。インド神話(?)のヒーロー、ローガン・ゴッシュが登場するサイケなサイケな物語。

「FREAKWAVE」
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オーストラリアで「マッドマックス」を観て大きく影響されたマッカーシーによる、大海洋を舞台にした「ウォーターワールド」と「マッド・マックス」を合わせたような作品。でも2話目から内容が大きく変わってチベット仏教みたいな内容になってるのがお茶目ではある。

「SKIN」
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サリドマイドの影響で短い腕を持ったスキンヘッドの少年が暴れまくるという内容が大きな論議を呼び、数々の出版社が出版を断念したといういわくつきの作品。他の作品に比べるとアートは比較的おとなしめで、絵本のような感じで読める内容になっている。ストーリーも結構真面目で、実は感動する内容になってたりする。まあ当時はこれくらいの内容でも出版が見送られたりしてたんですよ、

あくまでも傑作選なのですべての作品が網羅されてるわけではなく、彼らの最後のコラボ作品となった92年の「SHADE, THE CHANGING MAN」#22などからは数ページが掲載されてるのみ。ケンカ別れしたわけではないと思うのだけど、20年以上も一緒に仕事してないのは何故だろう?

その後もミリガンはコンスタントにコミックを書き続けてDCやマーベルでいろいろ作品を出してるわけだが、マッカーシーのほうはハリウッドへ映画の仕事をやりに行ったもののあまり音沙汰がなかったんだよな。しかし!今年は彼がジョージ・ミラーと長年ひたすら構想を練っていた「マッドマックス 怒りのデス・ロード」がついに公開されるのである!マッカーシーのインプットがどれだけあるのかはよく分からないが(車両のデザインとかは他の人がやったらしい)、「怒りのデス・ロード」は俺にとってはブレンダン・マッカーシーの映画なのである!

というわけで映画がヒットしてマッカーシーがハリウッドで活躍できれば良いなと思う反面、コミック業界に戻ってきて欲しいと欲しいと思うわけだが、ここ数年は「Spider-man: Fever」とか「Zaucer of Zilk」といったコミックをちらほら描いたりしてるので、またミリガン&マッカーシーでコンビを組んで作品を出して欲しいところです。
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