「Mr. Holmes」鑑賞

Mr. Holmes
イアン・マッケランが老齢のシャーロック・ホームズを演じた作品。監督はビル・コンドン。

舞台は1947年。ワトソンとは死に別れ、93歳になったホームズはサセックスに引退して養蜂を営んでいた(ここらへんはコナン・ドイルの原作どおり)。健康に良いという山椒を得るため、そして文通相手のウメザキと会うために日本の広島まで長旅をした彼は、マンロー女史が世話をするサセックスの家へと帰って来る。そこでマンロー女史の息子のロジャーと仲良くなった彼は、彼にせがまれて昔の事件について語るようになり、やがて自分が引退するきっかけとなった事件について回想することとなる…というようなあらすじ。

いちおう原作小説があるらしいけど、ドイルではなく別の作家によるもの。サセックスの生活に絡めて、引退のきっかけとなった事件、および日本におけるウメザキとの出会いがフラッシュバックで語られていくが、老齢のホームズの記憶力が不確かなものになっており、彼自身が「信頼できない語り手」となっている。ただしミステリー映画というほどではなく、晩年のホームズの姿が淡々と描かれるドラマなので、推理小説ファンには不満が残るかも。

76歳のマッケランがさらに老けメークをしてホームズを好演。彼が日本で出会うウメザキを真田広之が演じていて、日本の描写などはそんなに気にならなかった。真田広之、もうちょっと身長があればさらに活躍できると思うのだが…。エキセントリックなホームズに翻弄される薄幸なマンロー女史は薄幸な女性ばかり演じるローラ・リニーが薄幸そうに演じていて、ここらへんは平常運転ですかね。彼女はビル・コンドンとよく組んでいるけど、今回の役はイギリスの役者が演じたほうが良かっただろう。アクセントがなんかしっくりこないんだよな。あとワトソンの小説のためにホームズは有名人ということになっていて、過去の事件が映画化されたりしてるのだけど、映画版で彼を演じるのが「ヤング・シャーロック」でシャーロックを演じたニコラス・ロウ、という小ネタも隠されてます。

まあ手堅く作られたヒューマンドラマなのだけど、我々がシャーロック・ホームズに期待してるのってそういう内容ではないような。劇中でいちばん面白かったのはやはり若かりし頃のホームズが不敵な笑みを浮かべながら推理を働かせるシーンなわけで、変に老けメークなどせずにマッケランがそのまま名探偵を演じた方が面白かったのではないかと思ってしまうのです。

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