「ストレイト・アウタ・コンプトン」鑑賞

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個人的にはラップってあまり詳しくないのだけど、ギャングスタ・ラップは大嫌いでして、シカゴや東海岸ではサンプリングやビーツやライムなどの実験的で興味深いヒップホップの文化が育まれていってたのに、西海岸の連中がアホまるだしで銃だのプッシーだのドラッグだのと歌ったおかげで、世間にはラップってヘアメタルと同程度の文化だと見なされるようになってしまったというのが俺の持論です(結果的にギャングスタ・ラップの先駆者となったアイス・Tは好きだが)。ストリート育ちとか言ったって、実際にギャング出身のラッパーってそんなに多くないんじゃないの?

これはそんなギャングスタ・ラップで知られるNWAの伝記映画ですが、メンバーのうち大成したアイス・キューブとドクター・ドレーがプロデュースに関わっていることもあり、かなり彼ら(および他界したリーダーのイージー・E)を立てた内容になっていることは否めない。監督はキューブのダチだし、キューブが大学まで進学したことは隠されてるし、メンバーは一人いなかったことにされてるし(アラビアン・プリンスな)、ドレーが女性に暴力を振るった話なども一切出てこない。ロドニー・キング事件に象徴されるLAの人種差別に対抗してグループが音楽活動をやってたかのように描かれてるけど、当時の彼らってもっと頭の悪い事ばかり言ってたんだがなあ。こうしてミュージシャンを立てたとばっちりとしてマネージャーのジェリー・ヘラー(ポール・ジアマッティが好演)が悪役の扱いを受けていて、ヘラー自身はこの映画に対して訴訟を起こしてるんだとか。

まあこのように実際の出来事の描写に偏りがあるとはいえ、グループの立身伝として、成り上がっていくまでの描写に勢いがあることは間違いないし、そこらへんは観ていて意外と面白かった。しかし1時間くらいたったところでグループに内紛が起き、あとは分裂と解散に向かってドロドロとした話が続くわけだが、そこらへんの展開が長いのよ。もう20分くらい短い内容にしても良かったんじゃないのか。

キャスティングに関してはアイス・キューブを本人の息子が演じているのだが気色悪いくらいにソックリで、あれは結構画期的かも。もう父親は無難なコメディ映画に出るようにして、エッジの効いた役は息子に任せればいんじゃないのか。

というわけでNWAの「正しい」物語かというとたぶんそうじゃないだろうと思うのですが、典型的な音楽伝記映画といった感じですかね。ラップ映画ならこれよりも「ハッスル&フロウ」見た方がいいんじゃないですか。

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