「ボーダーライン」鑑賞

Sicario
原題はメキシコで暗殺者を意味する「Sicario」。4月に日本公開ということで感想を簡潔に:

・FBIの女性エージェントがメキシコ国境を舞台にした麻薬戦争の対処に志願するが、その闇に巻き込まれていくというあらすじ。

・エミリー・ブラント演じるエージェントは当初こそ敏腕であることが強調されるものの、国防省のエージェントからはろくな情報を与えられず、法律的にグレー(というかブラック)な範囲で行われる活動を目の当たりにして、肉体的にも精神的にも追い詰められていく。

・これって女性(および彼女の相棒の黒人)は無能だよ、と言っているわけでは当然なく、要するに麻薬戦争の複雑さを強調するための役回りになっているわけだが、まあ少しモヤモヤとした気分が残ることは否めない。特に国防省のスタッフ(ジョッシュ・ブローリン)とそのエージェント(ベネチオ・デル・トロ)がすべてを把握している立場なので主人公の弱さが目立ってしまうんだよな。ここらへんの女性の扱いは「マッド・マックス」と対比すると面白いかもしれない。

・つうかデル・トロのキャラクターが強すぎて、彼が実質的な主人公になっているような。彼を主役にした続編の話があがってるんだって?

・前半に出てくるジェフリー・ドノヴァン演じるエージェントも飄々としてるようでいざというときには活躍し、いい感じ。ただヒゲを生やしてるし顔があまり出てこないのでドノヴァンだとは最初気づかなかったよ。

・国境をめぐるサスペンスの描写も見事。常にどこかからか狙われている雰囲気があるというか。とはいえアメリカ側が装備などで圧倒的に勝っているため、緊張感が少し薄れているんだけどね。「ブレイキング・バッド」みたいな、圧倒的な弱者からの視点はなし。

・ロジャー・ディーキンスによる撮影は、相変わらず夕暮れと夜の光景が大変素晴らしい。空に浮かぶ雲の形さえも味方につけてしまっているような。今回は赤外線スコープヨハン・ヨハンソンによる音楽も効果的。

・しかし劇中のメキシカンは復讐の理由や脅しの文句がみんな「おめーは俺の子供を殺した」と「いう事を聞かないとおめーの子供を殺すぞ」なのだが、悪事に手を染めるなら妻子と縁を切っておけよ!

・女性主人公の扱いにはちょっと引っかかるものがあったものの、非常に緊迫したサスペンスであった。ドゥニ・ヴィルヌーヴはサスペンス映画が巧いことはもはや確立された事実だと思うが、はたして次作のブレードランナー続編で、どのようなSF映画を見せてくれるのか…?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です