「ヴィクトリア」鑑賞

Victoria
140分すべてワンカットで撮影されたことで話題になったドイツ映画。でも劇中のセリフは殆ど英語であるあたり、国際市場を意識してんのかなあ。英語のセリフが多すぎるという理由でアカデミーの外国映画部門の対象にはならなかったらしいですが。

舞台はベルリンの朝4時。マドリッドからやってきてカフェで働く少女ヴィクトリアは、ナイトクラブで夜通し踊った帰りに、地元の男4人に声をかけられる。最初は軽い気持ちで接していた彼女も、一緒に酒を飲んだり建物の屋上に行ったりしているうちに彼らとどんどん仲が良くなっていく。しかし彼らのとある頼みを聞いてあげたことで、事態は予想もつかない方向に進んでいき…というあらすじ。

跡切れのないショットは確かにすごいんですよ。ナイトクラブの狭い階段とかエレベーターの中にまでリアルタイムで入り込んでしまうあたり、カメラはここまで小型化したのかと感心してしまう。ヒッチコックの「ロープ」みたいに最大9分までしかワンカットで撮れなかった時代とは大違いですな。

ただそれが映画の面白さにつながっているかというと話は別で、最初はベルリンの路上で男たちと戯れるヴィクトリアをずっとカメラが追いかけ、編集なしでここまで演技してるのは立派だよね、と思いながら観ているものの、前半1時間くらい延々と遊び呆けてる彼女たちの姿が描かれると、いいかげん話を進めろよ!という気分になってしまう。

そして後半は話が急展開を迎えるわけだが、今度はヴィクトリアの気持ちが時間をかけてきちんと描写されないから、危険なことにもひょいとついていってしまう頭の弱そうな人に見えてしまうのですね。話に緩急をつけられないのがこういう映画の欠点かと。最近の映画で長廻しが効果的だったのはやはり「クリード」の中盤のボクシングマッチだろうが、あれもストーリーのなかで数分間のワンカットを持ってきたから見栄えがしたわけで、あれをずっとやってたらただのボクシング試合になってたでしょ。

確かに夜から日の出までの出来事を一発で撮ったことはすごいし、キャストとスタッフの力量は賞賛に値するものの、肝心の中身が面白くなくてはダメでしょ、ということを実感させてくれる映画であった。