「Justice League The New Frontier」鑑賞

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観たぞ。非常に良い出来。

まず最初にこの「New Frontier」について簡単に説明させてもらうと、カナダ出身のライター/アーティストであるダーウィン・クックのミニ・シリーズ・コミック「DC: the New Frontier」を原作としたアニメで、原作は1950〜60年代を舞台に、いわゆるシルバー・エイジのスーパーヒーローたちの登場と、太古から存在する邪悪な存在と戦うために力を合わせる彼らの姿を描いた大傑作コミックなのであります。冷戦や核戦争の脅威、市民権運動といったあの時代のパラノイアを背景に、政府の圧力や自らの持つ力に戸惑いながらも正義のために活躍するヒーローたちが非常に巧みに描かれており、スーパーヒーロー・コミックの原点をきちんと表現することに成功した作品だと言えるだろう。

それが今回ダーウィン・クック自身もスタッフに加わってDVDムービー化されたわけですが、非常に原作に忠実な出来になっていて、コミックのファンも十分満足できる内容になっている。絵柄はコミックに比べてキャラクターの線がやや尖っている気もするものの、コミックのデザインをそのまま踏襲したものになっている。製作にはブルース・ティムも関わってるぞ。カイル・マクラクランやルーシー・ローレスといった比較的有名どころの俳優を使ったキャラクター・ボイスも違和感はなし。

不満があるとすれば原作が約400ページという長いストーリーのなかで時代の移り変わりとヒーローたちの成長を緻密に描いていったのに対し、アニメでは70分という尺の短さのためコミックのストーリーが大幅にカットされ、各キャラクターのシーンも短くて、全体的にせわしない感じが最後までするところか。原作のエッセンスはきちんとおさえているんだけど、もう20分くらい長くても良かったのになあ。あとキャラクターの内面を表すモノローグも一切使われず、すべての出来事がセリフで説明されるため、彼らが何を考えているのかが少し説明不足に感じられる所もあるかな。よって原作を読んでないと話の展開が分かりづらい所もいくつかあるかもしれない。もっとも原作もDCコミックスの歴史に通じてないと分からないところは多々あったけどね。冒頭のルーザースの冒険とか、準主役的な存在だったチャレンジャース・オブ・ジ・アンノウンの活躍がカットされてるのも大変残念なところ。ただし原作と違う展開になる部分(ハル・ジョーダンが火星行きのロケットに乗る場面とか)は意外とうまく描かれていて、ストーリーの短縮がプラスになっている点も多い。

マーヴェルが出しているカスのようなDVDムービーと違って、スーパーヒーローとそのヒロイズムがひしひしと感じられる作品。このアニメを観て興味を持った人はぜひ原作のコミックスも読んでみてください。コミックならではのダイナミズムがあってアニメ以上に楽しめる作品なので。