「グリーン・ルーム」鑑賞

Green Room
こないだ不慮の事故で亡くなったアントン・イェルチン出演のサスペンス。題名の「グリーン・ルーム」ってバンドとかの「楽屋」のことな。日本ではなぜか来年2月とはるか先に公開らしいですが、これあまり前知識なしに観た方がいいと思うので、以下はネタバレ注意な。

4人組パンク・バンドの「The Ain’t Rights」はレーベルとまっとうな契約もしてない無名バンドで、バンを運転して地方でライブを行って日銭を稼いでいた。そして彼らはポートランドの森の中にあるバーでのライブを紹介されるが、そこはスキンヘッドのネオナチたちが集うおっかない場所であった。バンドのメンバーたちは身の危険を感じつつもライブをこなし、金を受け取って帰ろうとしたところである事件を目撃してしまう。その事件を目撃した彼らをネオナチたちは帰すことができず、バンドのメンバーたちは仕方なしに楽屋に籠城することになるのだが、彼らを引きずり出すためのネオナチたちの攻勢が始まる…というあらすじ。

パンクスvsネオナチの戦い、というと政治思想のぶつかり合いのように聞こえるけどそんな要素は一切なくて、ゾンビのごとく攻めてくるスキンヘッドたちに抵抗する栄養失調気味のパンクたちという、「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」「要塞警察」を踏襲したような内容になっている。高円寺のトイレで右翼構成員に絡まれてるバンドのおにーちゃんたち、という図式でしょうか。

ネオナチ(ちなみに監督は彼らを「極左集団」だと呼んでいる)のリーダーを演じるがパトリック・スチュワート。ピカード艦長やエグゼヴィア教授といった「いいリーダー」のイメージから一転して、狡猾で冷酷なリーダーを演じている。あのドスの効いた声で部下たちに淡々と攻撃を命じる姿がね、実はすごく似合っていたりするのよ。対するバンド側のギタリストを演じるのがアントン・イェルチン。おれイェルチンってどうもあの鼻にかかったような声と重みのない雰囲気が決して好きではなかったのだけど、ここでは逆にそうした特徴を活かし、追い詰められた軟弱者といった感じを存分に出していた。残念な人を亡くしてしまったものよ。あとはバンドのベーシストを、「ランナウェイズ」でもベーシストを演じてたアリア・ショウカットが演じてます。

そしてバンドとともにトラブルに巻き込まれる、スキンヘッドたちの知り合いの女の子をイモージェン・プーツが演じているのだが、彼女は物事のあらましを説明する役目を担っている一方で、バンドのメンバーたちよりも状況を把握しているということで結局いちばんおいしい役になっているような。メンバーたちが状況が全くわからないまま襲われる図式になったほうが話は面白くなったのではないかとも思うが、それでは観客にあまりにも不親切かな。

結構グロいシーンもあるというのでビクビクしながら観てたが、思ったほどではなかったかな。ただしアクション映画ばりの銃撃シーンなどがあるわけではなく、ナタやカッターナイフで相手に斬りかかるという攻撃方法が現実的であり、話の展開をよりスリリングなものにしていた。

全体的に荒削りな印象も受けるものの、パトリック・スチュワートの演技によって話も引き締まってるし、出色のサスペンスではないでしょうか。

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