「PATTERSON」鑑賞


ジム・ジャームッシュの新作。日本では「パターソン」の邦題で8月公開かな?

舞台となるのはニュージャージーのパターソンという街。主人公のパターソン(街の名前と同じだね、というツッコミが劇中でも入る)はバスの運転手をして暮らしており、毎朝早く起きてバスを運転し、夕食には妻と愛犬の待つ自宅へ帰る、という生活を繰り返していた。そんな彼の隠れた情熱は詩を書くことで、同じくパターソンに住んでいた詩人のウィリアム・カーロス・ウィリアムズに憧れながら、自分が目にして経験する物事について詩をノートに綴っていくのだった…というあらすじ。

ジャームッシュの前作「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」はファンタジーというかサスペンス性が強い内容だったが、こちらは一転して日常系の物語。パターソンの月曜から日曜までの1週間を切り出し、彼の淡々とした生活を描いている。事件というかトラブルも発生するものの、あまり影響が出ずにそのまま人生が続いていく感じ。あとは乗客の会話に耳を傾ける運転手、という点では「ナイト・オンザ・プラネット」に通じるものがあるかな。

主人公のパターソンは暇さえあれば詩を綴っている人物だが、アーティスト気取りのようなところは一切なく、詩人かと聞かれても否定するほど。むしろケーキ作りやインテリアやギターに興味が移りまくる彼の妻のローラのほうが、いわゆる意識の高い人にように振舞っているかな。

パターソンを演じるのはアダム・ドライバー。やはり「スター・ウォーズ」なんかよりもこういう一般人の役のほうが似合うよね。彼が書く詩はジャームッシュの好きな詩人が提供したものらしいが、撮影にあたってちゃんとバスの運転手の資格を取得したというのは流石だなと。あとは「ミステリー・トレイン」にも出演してた永瀬正敏がちょっと登場してます。

内容が内容だけにナレーション形式で詩がたくさん詠まれていて、これ日本語に訳すの大変そうだなと思っていたら「詩を訳すのは雨具を着てシャワーを浴びるようなものです」という身も蓋もないセリフが出てきておりました。まあそれでも訳さないといけないわけですが。

あまりにも淡々としすぎていて、アメリカで非常に高い評価を得ているのがちょっとよく分からないのだけど、ごく普通の人々が持つアート心への賛歌、という点が受けてるのでしょう。悪くはない作品。

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