「ONCE ダブリンの街角で」鑑賞

やっと観た。こういう映画にホロリとするほど俺はもう心優しい人ではなくなってしまったのですが、いい小品かなと。歌の部分が多いというのもあるが、全体にまったりしてるのがいいなあ。これが日本の今どきの恋愛映画だったら女の子が不治の病にかかったり、男が交通事故にあったりといろいろ大変な出来事が起きるんだろうけど、この作品は地に足がついているので観てて疲れない。主人公たちを軽視してたスタジオのミキサーが「お、こいつらイイじゃん」と気づくシーンも下手すればかなりクサい展開になりかねなかったが、あくまでもごく自然に描いているので好感が持てる。ハリウッド映画にしろ日本映画にしろ、こうした素人作品から学ぶべきことは多いんじゃないかな。

あと個人的にはやはりダブリンの街並みが非常に懐かしいなあと。狭い国の狭い街の話なので、半径1キロくらいのごく小さなエリアで話の大半が展開しているというのも、まあダブリンらしいところではある。俺が最後にダブリンに行ったのが98年くらいの頃なので、劇中でユーロが使われてたのにはちょっと驚いたけど。あとフィル・ライノットの銅像なんて建てられたんですね。ちなみに主人公がバスキングをしているグラフトン・ストリートって、銀座より地価が高くなったんだって?人口100万人ほどの街だぜ?経済が急失速して不動産がインフレ状態になってるのがよく分かる。ご哀愁さまです。

主人公を演じるグレン・ハンサードはアラン・パーカーの傑作「コミットメンツ」でもギタリストを演じてた人で、彼のバンドであるザ・フレイムスは本国でも長らく鳴かず飛ばずだったような感があるけど、この映画が世界的にヒットしたおかげで役者としてもミュージシャンとしても有名になったのは嬉しいこってす。アカデミー賞における彼とマルケタ・イルグロヴァのスピーチは非常に素晴らしいので、こちらで観るように。