「Brawl in Cell Block 99」鑑賞


日本でもカルト的人気を誇るホラー西部劇「トマホーク ガンマンvs食人族」のS・クレイグ・ザラー監督の2作目。以降はネタバレ注意。

ブラッドリー・トーマスは元アル中で、働いていた自動車整備工場を経営難のためクビになってしまう。さらに帰宅した彼は妻のローレンが浮気をしていることを知るが、ブラッドリーは彼女を許し、金を稼ぐために麻薬の運び人となることを決意する。それから18ヶ月後、運び人として得た金でブラッドリーは裕福になり、ローレンも彼の子供を妊娠していた。そんなとき、彼の雇い主のところにメキシコのギャングから大口の取引の話がやってくる。ギャングを信用しないブラッドリーだったが、雇い主の要望もありギャングのメンバーと一緒に麻薬を引き取りに行くものの、警察の張り込みに遭って逮捕・収監されてしまう。中犯罪刑務所で7年という判決を受けて服役するブラッドリー。しかしギャングのボスの使い人が面会に訪れ、彼が逮捕されたことで大きな損益が出たため、それを償うためにレッドリーフ重犯罪刑務所に服役している別の囚人を殺害するよう命じられる。その使い人はローレンを誘拐しており、ブラッドリーが命令に従わなければ赤ん坊を痛めつけると言うのだ。選択の余地のないブラッドリーは、ローレンとまだ生まれぬ子を救うため、レッドリーフ送りになるのを狙って刑務所で暴れるのだったが…というあらすじ。

「食人族」はB級ホラー的な設定を重厚に語っていった職人芸的な作品だったが、こちらは監獄ものを同様のタッチで描いている。2時間超えの尺であるもののブラッドリーが収監されるまでの経緯が入念に描かれていて、肝心の監獄シーンが始まるのは1時間ほど経ってからだが、前半も無駄な会話がなく話の展開が早いので見ている側を飽きさせない。入所の手続きのシーンだけでも緊迫感があるのは巧いね。

そして後半になってローレンの運命を知ったブラッドリーは仏頂面の暴力マシーンと化して、自分の目的に向かって一時も無駄にせずに暴れまくる。いちおう彼は昔ボクシングをやっていたという設定で、その割にはパンチの脇が甘いような気もするものの、その巨漢を活かしていかなる攻撃も受け止め、相手が警棒を持っていようがカンフー使いであろうがお構いなしに殴り、締め付け、手足をベキベキに折っていく。フィニッシュムーブはうつ伏せに倒れた相手の頭を踏みつけることで、これによって頭蓋骨がたくさんパックリ割れていきます。「食人族」はそのえげつない人体破壊の描写が話題になったが、こちらも容赦ない光景が続きますよ。

ブラッドリーを演じるのはヴィンス・ヴォーン。政治的なスタンスとかであまり好きな役者ではないものの、2メートル近い巨漢から繰り出す格闘芸はやはり圧巻。彼のベスト演技だとする意見も多いみたい。なおブラッドリーは外見はゴツいのに車を運転するときはソフトロックばかり流してたりする。そんな彼の妻のローレン役にジェニファー・カーペンター。あとはナチ女収容所のイルザみたいな格好でレッドリーフの所長を演じるのがドン・ジョンソン。そして不気味なギャングの使い人役にはなんとウド・キアー。クラーク・ジョンソンも1シーンに出てたりと、前作に続きキャストが変に豪華だったりする。

まあ決して気軽に観られるような作品ではないけれど、エクスプロイテーション的なジャンルの作品をすごく真面目に撮っているのは特筆すべきことだし、「食人族」がツボにはまった人ならこちらも楽しめるでしょう。なおザラー監督の次回作「Dragged Across Concrete」は再びヴォーン(およびこの映画の出演者の大半)と組むほか、なんとメル・ギブソンも出演して、警察による暴力を扱った作品になるのだとか。ハリウッドでも右寄りの異端児扱いされてるギブソンとヴォーンによる警察映画ってどんなものになるのか?今から楽しみである。

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