昨年高い評価を得たドキュメンタリー。東京国際映画祭でも「まったく同じ3人の他人」の題名で公開されてたのね。これあらすじをただ書くだけで面白いので、以降は完全なネタバレになります。

物語は1980年代初頭から始まる。新しく大学にやってきた男子生徒のボビーは、あらゆるところでエディという別の生徒と間違えられる。エディの元ルームメイトに至ってはボビーを見て驚愕し、彼を連れてエディの家へと車を走らせる。そこでボビーが対面したのは、格好が彼に瓜二つで、誕生日さえも一緒というエディの姿だった。実はエディとボビーは同じユダヤ系の母親のもとに生まれた双子で、お互いの存在を知らぬまま別々の家庭に養子として引き取られて育ったのだった。

今までお互いのことを知らなかったのにも関わらず、ボビーとエディは意気投合して「再会」を喜びあう。この二人のことは瞬く間に話題になり、ニュースにも取り上げられた。そしてそれを知って彼らに連絡をしてきたのが、これまた彼らにそっくりな格好をしたデビッドだった。実は彼らは三つ子であり、彼らの驚異的な物語は全国の話題となって彼らは様々なテレビ番組に引っ張りだこになる。映画「マドンナのスーザンを探して」にもカメオ出演したほか、その知名度を生かして「Triplets」というレストランをニューヨークに開店、彼らはセレブとしての人生を満喫しているようだった(余談だが、この店の映像にはバブルな日本人女性たちが騒ぐ光景も映っていて、当時はこうも派手な暮らしができたんだなと驚きを禁じ得なかった)。

しかし全てが順調というわけではなくて、まず彼らの両親が、なぜ自分たちの受け入れた子供達が三つ子であったことを知らされなかったのか、彼らを手がけた養子縁組のエージェンシーに説明を求めに行くものの、満足できる答えは得られなかった。そして三つ子たちは実の母親に会うものの、酒浸りで精神を病んだ彼女の姿にショックを受ける。やがてエディも仕事のストレスなどからうつ病になり、自らの命を絶ってしまう。

そしてその後に「ニューヨーカー」誌のジャーナリストが追っていた話が、彼らを巻き込むことになる。実は彼らが養子に出されたのはピーター・ニューバウアーという著名な心理学者の指示によるものであり、ユダヤ系の子供達を扱うエージェンシーを介して彼らを任意の家庭に入れさせたのだ。これにより、三つ子にはすべて同い年の姉がいることや、それぞれの家庭環境が裕福・中流・労働者階級に分かれていることが、すべて計画されていたことが明らかになる。

ニューバウアー博士はこの三つ子だけでなく、他にも複数の双子たちを意図的に別々の家庭に養子にやり、何らかの研究を行なっていたことが判明していく。この研究は60年代から20年もの長きにわたって実施されたものの、その結果は一切発表されず、研究の目的は何なのか、資金はどこから出ていたのか、という謎は劇中でも完全に明らかにはされない。育つ環境が人にどう影響するのかとか、親が精神病を患っている場合は子供にどれだけ引き継がれるのか、といった研究がされたのではという説も出されるが、どれも憶測の域を出ない。なおニューバウアー自身はナチの迫害を逃れたユダヤ人らしいので、ナチの極秘実験、ということではないみたい。

現在はレストランも畳んで、年をとったボビーとデイビッドが「我々はそっくりな三つ子だけど、実は異なるところも多かった」みたいなコメントをして映画は終わるのだが、やはりこの謎の研究プロジェクトの解明がキチンとされないのでモヤモヤするよな。この映画の製作完了にあたって、2066年まで開示が禁止されているという研究レポートの一部がボビーたちに渡されたらしいけど、黒塗りが多くて使えない資料だったとか。この映画が注目されたことで、さらに物事が明らかになってくるかな?

ドキュメンタリーとしては役者を使って当時の状況を再現しているあたり、エロール・モリスのスタイルに近いかなと思ったけど、監督のティム・ワードルは特にモリスのもとで学んだとかいう人ではないみたい。話題になったドキュメンタリーの常として、ドラマ化されるという話も出ているようで、やはり主役の役者は一人で3役を演じるんだろうか?

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