「ヘレディタリー/継承」のアリ・アスター監督によるさらなるホラー。日本では2月公開ということで感想をざっと書きますが、内容を語りにあたりネタバレせざるを得ないので以下は注意。

身内にきつい不幸があったため精神的に不安定になっていたダニという女性が、彼女に迷惑してそうなボーイフレンドに連れられて、スウェーデン人留学生の里帰りに友人数名と同行することになる。帰省先は田舎のコミューンで、昔ながらの習慣に従って夏至の祭りを祝おうとしていた。笑顔を絶やさない地元の人たちにダニたちは歓迎されるものの、やがて周囲で奇妙なことが起きるようになり…というあらすじ。

ぶっちゃけ話は「ウィッカーマン」そのままで、地元のカルト民に翻弄される部外者をテーマにしたもの。「ウィッカーマン」「ヘレディタリー」同様に、いろいろ事前に仕掛けられたプロットに主人公がハメられていく話なので、そういうホラーが好きでない人には向かないかも。「ヘレディタリー」に比べて急にビックリさせるようなシーンが少ない反面、カメラワークが上達していて、楽しそうなんだけどなんかヤバいコミューンの姿を端麗に描いている。物語の途中に出てくるタペストリーにも重要な意味が隠されているので見過ごさないように。

劇中に出てくる儀式や道具についてはそれなりに入念なリサーチがされたそうで、過去の遺物や伝承に基づいたものであるそうな。ただし勿論のこと話に出てくるようなコミューンや儀式は現実には存在しないわけで、これってスウェーデンの人たちに失礼じゃね?と思ってしまったよ。

少なくとも「ウィッカーマン」は「自国の片隅ではこんな恐ろしいことが行われている」という設定だったが、こちらはアメリカ人が外国で原住民たちにヒドい目に遭う、という内容であるため、これが舞台がスウェーデンでなくアフリカとかアジアだったりしたら、少なくともポリコレ的には叩かれていたのではないかと。しかも撮影はスウェーデンでなくハンガリーで行ったとかで、スウェーデンに経済的な貢献もしていないし。これスウェーデンでの評判はどんなものなのだろう。

その一方では、これをヤコペッティ的なモンド映画の進化した形態として捉えることもできるわけで、世界各地を舞台にリメイクができるんじゃないだろうか。日本だって奇妙な風習の残る農村なんてたくさんあるだろうし。

主演のダニを演じるのはフローレンス・ピュー。「ファイティング・ファミリー」での演技はそんなにピンとこなかったが、1年くらいのあいだに、あれと「ミッドサマー」と「リトル・ドラマー・ガール」と「若草物語」という幅広いジャンルの作品に怒涛のスケジュールで出演しているわけで、それを考えるとすごい演技力を持っているのかもしれない。あとは有名どころではウィル・ポールターなども出ていて、みんな満遍なくヒドい目に遭っています。

2時間半近い長尺(完全版は3時間あるらしい)ながら、話が具体的に進展するのは最後の1時間くらいだし、ある程度は人を選ぶ作品かもしれない。個人的にはやはり「ウィッカーマン」に似ているのが気になったかな。とはいえ悪い映画ではないです。

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