「PLAN B」鑑賞

米HULUのオリジナルムービーで、誰も知らない傑作TVシリーズ「THE MIDDLEMAN」などで知られるナタリー・モラレスの初監督作品。

舞台はサウスダコタ州。厳格な家庭で育ったサニーとルペの少女ふたりは学校でも人気のないタイプだったが、特にサニーの方は彼氏を作りたくてウズウズしていた。そこでサニーは親が不在のときにハウスパーティーを開き、意中の少年を含む同級生をいろいろ招くものの、物事はうまく行かず別の少年を相手に初体験をしてしまう。さらにその際に使ったコンドームに不手際があったことから、避妊に失敗したのではとサニーは恐怖にかられる。急いで彼女とルペは薬局にアフターピル(通称プランBピル)を買いにいくものの、薬剤に販売を拒否されてしまう(本人のモラルに基づいて販売を拒否できるという変な法律があるらしい)。そのためサニーとルペは、遠く離れたプランド・ペアレントフッドに向かうことを決意し、親の車を拝借して避妊の旅に出るのだったが…というあらすじ。

製作はブラッド・ピットのプランB …では残念ながらないが、「ハロルド&クマーのプロデューサー」という宣伝文句からも察せられるように、バディふたりが一晩の道中でさまざまなトラブルに見舞われるコメディ。主人公が女性ふたりという点では、同じく女優の監督デビュー作だった「ブックスマート」に似ているところがあるけど、あれよりはもっとお下劣で、モロチンとかも出てきます。

ティーンの少女が避妊(中絶)を求めて親に黙って遠出するという内容は、昨年高い評価を受けた「NEVER RARELY SOMETIMES ALWAYS(17歳の瞳に映る世界)」と同じだけれども、当然ながらあんなヘビーな話ではない。とはいえ少女がアフターピルを入手するのには相当苦労し、ろくに避妊も行えないというアメリカの現状がうまく織り込まれているかな。サニーだけでなく親友のルペも、彼女なりの悩みを抱えているのがポイント。サニーはインド系でルペはヒスパニックなのだが、最近は非白人の家庭の方が保守的になってきているのだろうか。インド系の情報はそのコミュニティ(劇中では「インディアン・マフィア」と呼ばれる)で瞬時に拡散されるのでサニーは気が抜けない、というネタが面白かった。

サニー役のクフー・ヴァーマやルペ役のビクトリア・モロレスをはじめ、出演者はみんな比較的無名の役者ばかりかな。個人的に好きなコメディアンのレイチェル・ドラッチが1シーンだけ出ています。

コメディとソーシャルコメンタリーのバランスがちょっと悪い気もするし、初監督作品ということで演出が少しこなれてない感があるものの、苦境にめげずに頑張る少女ふたりの姿が面白い良作ですよ。