「Batman: White Knight」や「Chrononauts」(ストーリー:マーク・ミラー)、さらにこないだ映画化が発表された「Tokyo Ghost」(ストーリー:リック・リメンバー)といった人気コミックを連発し、勢いに乗っているアーティストのショーン・マーフィーによるSFファンタジーコミック。1年前にIndiegogoでのクラウドファンディングに出資してな、完成品が届いたのだよ。

舞台となるのは電子書籍を管理するプログラムの中の世界。毎日数多くの書籍がそこに投入され、エド(エディター)と呼ばれる老女が実際に本の中の世界に飛び込んで必要な校閲を行って書籍を管理していたが、謎のウィルスのよって多数の書籍が破壊されていることに彼女は気づく。ウィルスに対抗するために彼女は様々なジャンルの本から優秀な戦士たちを集め、「プロット・ホールズ」というチームを結成してウィルスを撃退しようとするのだが…というあらすじ。本の世界と現実世界(プログラムだが)が交錯するさまはマーフィーがグラント・モリソンと組んだ「Joe The Barbarian」に少し似ているかな。

後述すように話の設定はよく分からんのだけど、要するにいろんなジャンルのキャラクターたちが集まって戦うコミック版「スパイダーバース」と思ってくれればいいかと。チームのメンバーには姿を自在に変えられる巨大トラ男とか、日本の漫画のキャラとか、女性吸血鬼とか、子供向け新聞マンガのキャラクターなどが揃っていて、新たにクリフ・ウィーゼルウィッツ(別名インクスレイヤー)というコミック作家がチームに加わるところから話は始まる。いちおうクリフが話の主人公ではあるものの、チームを率いるエドが今年亡くなったマーフィーの祖母をモデルにしているそうで、いちばんおいしい役回りになっているかも。

ショーン・マーフィーのアートは冴えていて、アクションシーンなんかもカッコよく描かれているものの、作品のウリであるキャラクターの描き分けはあまり顕著じゃないかな。例えば日本の漫画から出てきた「ジョニー・マンガ」と言うキャラクターは周囲に「あんた目が大きいね〜!」と言われるのだけどあまりそうも見えなくて、少なくとも「スパイダーバース」のペニー・パーカーみたいに明らかに別世界のキャラというデザインではないわな。また無数の本からキャラクターを選べたはずなのに、チームのメンバーがSFとファンタジー系のキャラに偏ってるのも凡庸かな。例えばニール・ゲイマンとかグラント・モリソンといったライターがストーリーを担当していたら、どんなキャラクターが登場してただろうと考えてしまう。なお「ガンダム」や「カウボーイ・ビバップ」などといった作品も言及はされますが当然登場はしません。

全体的な印象としては「いろんなジャンルのコミックのキャラが共闘する作品が描きたかったんだな!」というものでして、まあコミック・アーティストとしては理解できる願望だしその目的は果たせているかと。ただやはりストーリーが弱くて、プログラムの世界の設定にしても、電子書籍が破壊されても元の紙の書籍は残ってるのかとか、どのキャラクターも自分の世界がフィクションであることをすんなり受け入れすぎてるだろとか、いろいろ雑な設定が多いのが読んでて気になってしまった。いくら本の題名が「THE PLOT HOLES」でも、話の設定に抜けがあってはいかんでしょ。約150ページのボリュームで10ドル(電子版)というお買い得だったし十分に楽しめる作品ではあったものの、やはりマーフィーは他のライターと組んだ方が良いかな、と思ってしまうのです。

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