「HELP」鑑賞

「キリング・イヴ」でブレークして、「フリー・ガイ」が大ヒット、そして今度は「最後の決闘裁判」に出演と絶好調のジョディ・カマーが主演したチャンネル4のTVムービー。以下はネタバレ注意。

イギリスでのCOVID-19パンデミックをテーマにしたもので、粗野な家庭の出身のサラはリバプールのケアホームで介護士として働くことになる。そこは主に老人たちが住むケアホームだったが、若年性認知症のトニーも住んでおり、サラは彼と仲良くなっていく。しかしイギリス全体にパンデミックが襲いかかり、ケアホームにおいても感染者が増えて介護士の手がまわらなくなり、サラは絶望的な状況に置かれるのだった…というあらすじ。

ロックダウン下での家族生活を扱った「Together」もそうだったが、イギリスのテレビは時事ネタを映画化するのが早いよな。これは業界全体が小さいからなのか、あるいは脚本家に劇作家が多いので、少人数の物語ならすらっと書けてしまうのだろうか(この作品の脚本家は「ワンダー 君は太陽」などいろいろ書いてるジャック・ソーン)。

この作品も三幕劇のような構成になっていて、前半はサラがケアホームでの仕事に慣れていく展開が描かれ、中盤になってからはCOVID-19が皆に襲いかかり患者が増えるなか、サラが夜にひとりで皆の世話をしようと努力する展開になっている。20分以上の長回しシーンもあるよ。そして最後は、ケアホームの所長によるトニーへの扱いに憤慨したサラが、トニーを逃そうとする話。

急いで撮影したのか全体的に作りが雑な感じは否めなくて、それぞれのシーンのつながりとかがよく練られていなかったような。その反面、荒削りだがパワフルなメッセージを打ち出した作品でもあった。しかし何故かクローズアップと浅いフォーカスを用いた撮影が多用されていて、画面のどこかしらがボケているのが気になって仕方なかったよ。ああいうアート映画っぽい撮り方はこういう作品には向いてないと思う。

トニー役に「ヴェノム2」のスティーブン・グレアム。どうもジョディ・カマーの才能を見出したのが彼だそうで、師弟コンビの共演映画ということになるのかな。あとはケアホームの所長をイアン・ハートが演じていて、ニタニタ笑いながら怒るという奇妙な演技を見せてくれます。

物語の最後においてサラは画面に向かって国への恨みの言葉を吐き続け、エンドクレジットではパンデミックでの犠牲者の4割がケアホームの住人だったこと、必要な防護具がケアホームの1割にしか届けられなかったことなどが説明されていく。このように国をしっかり批判できるのがイギリスのテレビ局(さらに言うとチャンネル4)だよなあ。日本のテレビ局はこういうことできないでしょ。