「THE SHOW」鑑賞

自分のコミックの映画化はことごとく貶していたアラン・ムーア先生、ついに自ら脚本を書き上げたのでございますよ。以降はネタバレ注意。

ムーア作品なので舞台は当然の如くノーサンプトン。そこに潜伏しているらしいジェームスという男を探しに、フレッチャーという探偵が街へとやってくる。しかし前日にジェームスはパブの階段から落ちて死んでいた。彼が持っていたネックレスをフレッチャーは探していたのだが、ジェームスの死体には見当たらなかったことからフレッチャーはノーサンプトンに滞在して捜査を続けることにする。そして彼は街の奇妙な住人たちに次々と出会っていく…といったあらすじ。

以前に公開された「SHOW PIECES」の続編というか本編的な扱いだが、あっちを観てなくても大丈夫、というか全部観ててもストーリーが分からないっす!まあ短編でいろいろ意味不明だった点についてこちらで一定の解答が出されていて、それについては満足する結果にはなっていたが。ジャーナリストのフェイスは死んだわけではなく臨死体験をしていて、一方のジェームスは実際に死亡している、彼らの辿り着くナイトクラブは一種の地獄のようなところで、夢の中からも行くことが可能、ということで良いのかな?

そのナイトクラブにまつわる過去などをフレッチャーは探っていくのだが、そこで彼が出会う街の住人が、2人組の少年探偵や覆面ヒーローでもある図書館司書、ヒットラーまがいの格好をして歌うミュージシャン、などと奇人変人ばかり。皆が話に大きく関わってくる訳でもなくて、あなた何やってるの?という人もいますが、まあそういうものなのでしょう。

部外者が街にやってきて街の過去を調べるうちに奇妙な出来事に遭遇する、という展開はこんど邦訳の出るムーアの「プロビデンス」に似てなくもない。新聞の見出しや街中に貼られたフライヤーなどにもいろいろネタが仕込まれてるのは「リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン」っぽいし、70年代に名を馳せたギャングが出てくるのはLOEGの「Century」第2作目を連想させました。映画としての雰囲気はデビッド・リンチの作品に近いかな、と思ったけど必要以上にノーサンプトンのトリビアをぶち込んできてる点はジョン・ウォーターズのボルチモア愛に通じるものがありますね。

ライターが脚本を務めた作品の常としてセリフの量がやたら多いけど、説明口調のセリフは少なくて次々と謎が出てくる感じなので飽きさせない。ムーア先生は脚本を担当しただけでなく、忘れられたコメディアンであり上記のナイトクラブの主であるメタートン氏としても出演し、お月様のようなすんごいメークをしていちばん美味しい役を演じてます。さらにサントラでも使用されてる曲の半分くらいは彼が作詞していて、どこをとってもムーア印の作品でした。

監督は「SHOW PIECES」も含めて、ここ最近ムーアといろいろ組んでいるミッチ・ジェンキンス。いかにもデジタルビデオ撮影したようなスタイルは個人的にあまり好きではないけれど、今回は予算が潤沢になったおかげか「SHOW PIECES」のときと比べて凝ったショットも増えて、映像作品としてずっと面白くなっていたな。主演のフレッチャーを演じるのは「私立探偵ストライク」のトム・バークで、その他の役者は「SHOW PIECES」から続投している人が多かった。

正直なところアラン・ムーアの独りよがりの作品になりそうな気がしてあまり期待はしてなかったのだけど、きちんと娯楽作品としてのツボも押さえていて、意外と楽しめる内容になっていた。もちろん意味不明なところはたくさんあるのですが。現在のムーア先生、もうコミックスとは手を切って小説を書いてるらしいけど、またちょっと映画を手掛けても良いんじゃないでしょうか。

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