ドクター・フー「The Power Of The Doctor」鑑賞

というわけで13代目ドクター最終回だよ。以降はネタバレ注意。

4年にわたる13代目の冒険は、コロナ禍や予算削減によるエピソード減などがあったはずで必ずしも順風満帆ではなかったものの、ジョディ・ウィテカーの演技は歴代のドクターに匹敵する素晴らしいもので面白かったと思う。その一方で問題だったのはやはりショウランナーのクリス・チブナルの脚本で、番組の方向性が最後まではっきりしないためにドクターの活躍もずいぶん制限されたものになっていたのでは。ラッセル・T・デイビスの脚本はウェールズ万歳の冒険活劇風で、スティーブン・モファットは伏線をばら撒きする傾向はあったものの回収できたときの完成度は非常に高かったのに、チブナルのは面白そうな展開を出すだけ出しておいて後につなげることができなかったというか。ジャック・ハークネスとか未来のドクターとか登場させておいて、そのプロットをきちんと閉じることができなかったのが不完全燃焼であった。

今回のスペシャルもその傾向があって、冒頭の冒険のあと、前シーズンでコンパニオンになったダンがいきなり退出。そのあと、現代でマスターがダーレクたちと組んで世界中の火山を噴火させようとする計画が、20世紀初頭のロシアと関係していることが判明してドクターが両方の時代を行き来するものの、なんで2つの時代が関係しているのかよく分からず…裏切り者のダーレクによってドクターが彼らの計画を知るという展開もちょっと雑だったな。

その一方で見応えは間違いなくあるんですよ。敵はマスターとダーレクとサイバーメンとてんこ盛りだし、5代目〜8代目のドクターたちが(みんな老けてるけど)登場するし、過去のコンパニオンたちも登場するし、90分の長尺のなかでファンサービスを詰め込こもうとした意気込みは感じられるのですね。ただそうした要素の1つ1つが物語の全体的な完成度を高めているかというと微妙なのがチブナル脚本だなあと。

俺と違って7代目のシーズンやコンパニオンとかに思い入れのある人が観たら、もっと楽しめるのかな。往年のファンが楽しめるように配慮した一方で、13代目にあたるべき焦点が甘くなったような内容だった。個人的には前シーズンまでさんざん煽っていた、コンパニオンのヤズのドクターに対する恋愛感情にあまり重きを置かれず、比較的さらっとした別れになってたのが残念。まあドクターはアセクシュアルな存在なので、そこらへんの描き方は難しいんだろうけど。

次のエピソードは、え、なに、1年後の11月の予定なの?放送直後からネタバレされてたが次のドクターはデビッド・テナントの10代目が復帰するとかで、ショウランナーとして復帰するラッセル・T・デイビスの腕ならし的なものになるのかな。そのあと既に発表されているチュティ・ガトゥが新ドクターに就くそうで。ディズニー資本が入ってイギリス以外ではディズニー+で配信開始になるそうだが、変にアメリカナイズされた内容にならないことを願います。