「INSIDE」鑑賞

ウィレム・デフォー主演の今年の映画。

デフォー演じる泥棒のネモは金持ちの住人の留守を狙い、その高層マンションのペントハウスにヘリコプターを使って忍び込み、部屋に飾ってあるエゴン・シーレの絵画を盗もうとする。しかし脱出が予定通りに行かず、ネモは部屋の扉を開けることができないまま中に閉じ込められてしまう。ヘリコプターを操縦していた仲間にも見捨てられ、彼はどうにかして部屋から脱出する方法を見つけようとするのだが…というあらすじ。

話のプロットだけ聞くと「ルパン三世」や「オーシャンズ11」のごときハイストものを想像するかもしれないが、実はバリバリのアート映画であった。登場するのはほぼネモのみで、彼が閉じ込められた部屋は強靭なガラス窓に囲まれて破ることができず、防犯カメラから外部の清掃員などを監視することはできるものの誰も彼が中にいることに気づかない。彼の脱走の試みはことごとく失敗し、水道が出ないので観葉植物用のスプリンクラーで喉の渇きを抑えながら、冷蔵庫にあった少ない食料で何日、あるいは何週間も過ごした彼はやがて悪夢や幻覚を経験していく。

デフォーが最後にアベル・フェラーラと組んだ「SIBERIA」も確か雪の洞窟のなかでデフォーがひとり幻覚を見る映画だったが(ごめんなさい内容全く覚えてないです)、野生でなくモダンな文化のなかで男が孤立し、人間性を失っていくさまはJG・バラードの小説「コンクリートの島」によく似ていると思う。

デフォーの演技力は抜群だし、彼がいろいろ脱出を試みるさまは面白いものの、さすがに彼の一人芝居が2時間弱続くのはちょっとしんどかった…。監督はVasilis Katsoupisというギリシャの人?脚本はベン・ホプキンスというイギリス人らしいが、知らんなあ。

「コンクリートの島」が映像化されたらこんな内容になるのかな、と思いつつ観る分には楽しめたが、ウィレム・デフォーが活躍するハイスト映画のようなものを期待すると壮絶な肩透かしをくらうので気をつけましょう。