柳下毅一郎訳で10月発売だそうな。500ページを超えるあの大作がついに日本でも手に入るのか。切り裂きジャックを扱った作品だがいわゆるフーダニットものではなくて、世紀末のビクトリア王朝の腐敗や貧しい庶民の生活、そしてジャックが20世紀にもたらしたものなどを多くの観点から描いた、蘊蓄本に近い内容になっている作品。俺が特に好きなのは前半のロンドン中を馬車で廻りながら、建築物に隠された様々なシンボルの秘密が解説されていく悪夢のようなシーン。コミックにおける時間の流れ(特に時間がゆっくり進む描写)なども非常に良く練られたものになっているので、書店で見かけたらぜひ手にとってご照覧あれ。映画版とはまったくの別物だからね!

ただし個人的にはエディ・キャンベルのアートがどうしても好きになれなくて、彼が才能あるアーティストだというのは承知してるのですが、写実的というよりもむしろ抽象的(と俺は思う)なそのスタイルは、これだけ多数の人物が出てくる作品にはちょっと向かなかったんじゃないかと。読んでて人の顔の区別がつかなくなることが多々あったような。もちろん彼のアートがこの作品のムードにたぶんに貢献していることは承知してるのですが、他のアーティスト(例えばブライアン・タルボット)が担当してたらどんな作品になっただろうと思うことしきり。

ちなみにみすず書房のサイトにある「マンガとも小説とも異なるグラフィック・ノベル」という表現にはちょっと違和感を感じまして、「グラフィック・ノベル」の定義については本国のアメコミファンのあいだでも議論されてるんだが、個人的には「グラフィック・ノベル=マンガ」なので、変に名称を変えてマンガとは別物扱いで宣伝することはあまり好きではないのであります。

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