「BURDEN OF DREAMS」鑑賞

鬼才ヴェルナー・ヘルツォークの名作「フィッツカラルド」の悪夢のような製作過程を追ったドキュメンタリー「BURDEN OF DREAMS」のクライテリオン版DVDを観る。かつて南米のジャングルで「アギーレ 神の怒り」という大傑作(観ろ!)を撮るのに成功したヘルツォークだが、同じく南米の奥地を舞台に「フィッツカラルド」を作るのにあたり、さすがに今回は映画が完成できないかもしれないと危惧して、ドキュメンタリー作家のレス・ブランクに製作過程の一部始終を撮らせたのがこの作品になったらしい。

そんなヘルツォークの不安は現実のものとなり、アマゾンの先住民からの反発や天候の影響、備品の不足などによって製作はズルズルと延びていく。当初は主役を務めるはずだったジェイソン・ロバーツとミック・ジャガーが撮影途中で降板したり、蒸気船が浅瀬に座礁したために撮影が何ヶ月も遅れるなど、映画を作る者にとっては悪夢のような出来事が次々と続いていくわけだが、それでも淡々と(半ば放心状態で)自分のヴィジョンを語るヘルツォークの姿が印象に残る。ストーリーの山場となる蒸気船の峠越えにおいても鉄のフックがちぎれるといったトラブルが頻発するわけだが、先住民を大量動員して船を動かそうとするヘルツォークの姿が、そのまま劇中のフィツカラルドとダブっているのが興味深い。ちなみにヘルツォーク自身はフィッツカラルドと違って先住民を搾取するようなことはせず、自然と共に暮らす彼らの文化を賞賛し、それが西洋文化によって消えていっていることを嘆いている。そして結局映画が完成されるまでに4年かかったとか。

全体的に盛り上がりに欠けるのでドキュメンタリーとしては凡庸なんだけど、自然の極限の地において夢を追い求めるヘルツォークの姿には強く惹き込まれる。あとDVDの特典に収められている、スタッフに対して激しく怒り狂う一方で、チョウを肩に乗せて無邪気に笑うクラウス・キンスキーの映像がとても印象的だ。

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