「100 BULLETS vol.9: STRYCHNINE LIVES」読了


現在続いているシリーズとしては最高の作品だと考えているコミック「100 BULLETS」のペーパーバック第9巻「STRYCHNINE LIVES」がやっと発売された。 前巻の「THE HARD WAY」でストーリーが1つのヤマ場を迎え、最重要人物の1人の死によって終わっていたことから、今回はその死が引き起こす状況の変化を描いた「過渡期」的な内容になるかなと思っていたら、その予想は見事に嬉しく裏切られた。確かに物事の移り変わりが中心的に描かれているものの、過去に登場した様々な人物たちが再び登場し、それぞれの人生が複雑に交差して、皆が1つの大きな運命に引き寄せられるかのようにストーリーがグイグイと進んでいく。途中で意外な再会をする者たちや、衝撃的な死を迎える者たちがいろいろ出てくるわけだが、話が決して唐突もしくは散漫な感じにならず、すべての裏に綿密なプロットがあるかのようなブライアン・アザレロのストーリーテリングはやはり見事。そして上流社会の美女から社会の底辺に住む人々までを生々しく、かつスタイリッシュに描くエデュアルド・リッソのアートもまた素晴らしい。彼の描く危険な男たちの世界があってこそ、この作品は成り立っていると言っても過言じゃないだろう。

スラングや隠喩の多い文章や、謎の多いストーリー展開のおかげで多少読みづらい部分もあるものの、相変わらず他のアメコミでは得られない満足感を与えてくれる傑作。次のペーパーバック発売まで、また1年近くも待たなければならないのが非常につらいのです。