ピストルズちょっといい話

マルコム・マクラーレンの死に関して、ロジャー・イバートのブログに70年代にマクラーレンがラス・メイヤーを雇ってセックス・ピストルズの映画を撮らせようとしたときの話が記されていて、非常に興味深い内容になっている。

ことの発端はメイヤーの「ワイルド・パーティー」をマクラーレンが気に入ったことで、彼にピストルズ版「ハード・デイズ・ナイト」を撮らせようとしたことにある。早速メイヤーとイバートはLAでマクラーレンと会い、彼とメイヤーはウマが合わなかったものの、とりあえず20世紀フォックスも絡め、イバートが脚本を書いて映画を作ることになったそうな。

キャスティングもマリアンヌ・フェイスフル(!)がシド・ビシャスのヘロ中の母親を演じる話があったそうで、打ち合わせのために今度はメイヤーとイバートがロンドンに行き、そこでジョニー・ロットンとシドに出会ったらしい。当時のロットンはマクラーレンがろくに金を渡さなかったせいでガリガリに痩せていたそうだが、それを見たメイヤーが彼に分厚いステーキを奢ることにした時のやりとりが面白い。メイヤーって従軍経験を非常に楽しんだ人なんだけど、こんな感じ:

メイヤー:ジョンよ、お前さんのそんな細い腕では軍隊に入ったら1日ともたんな。
ロットン:何で俺が軍隊なんかに入らなきゃならないんだよ!
メイヤー:よく聞けこのクソガキ、わしらはお前たちのためにバトル・オブ・ブリテンを戦ったんだぞ!
イバート:(実のところアメリカはバトル・オブ・ブリテンに参加していないことが頭に浮かんだが、私はとりあえず黙っていることにした)

そのあとこの映画の話は例によってスタジオが手を引いたり、金のことでモメたりして立ち消えになってしまったのだが、後にジュリアン・テンプルが監督した「ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル」にメイヤーが撮影したショットが使われてるんだとか。ラス・メイヤーによるセックス・ピストルズの映画ってのは観てみたかったなあ。でもブログにあるイバートの脚本の抜粋を読む限り、なんかツマらなそうな話ではあるんだけどね。