追悼記念としてフランク・フラゼッタのドキュメンタリーを観る。ブルックリンのタフな界隈で育ったフラゼッタは幼い時から天性の画力を発揮し、当初はコミック・アーティストとして動物漫画を描いたりアル・キャップのアシスタントを勤めたりしたのだが、50年代のコミックの衰退とともに業界を離れ、「マッド」誌に描いたリンゴ・スターの似顔絵がきっかけとなってハリウッド映画のポスターを手がけるようになり(この頃はカリカチュアが多かった)、それから「ターザン」や「コナン」などのペーパーバックの表紙を描くようになって多くのアーティストに影響を与える存在となっていく。彼って意外と多くのコミックを描いてるんですね。ペイント画も十分に躍動感があるけど、コミックではさらに動きが強調されていて俺はそっちのほうが好きかも。

若い頃はロバート・ミッチャムのごとき端正なルックスを誇り、その体は筋骨隆々としていて空手は黒帯、野球ではニューヨーク時代のジャイアンツから2度もスカウトを受け、でっかいバイクを乗り回し、カメラを500個も持っているカメラマンで、彫刻も手がけたというとにかく超人のような人物だったわけですよ。その一方では妻と子供たちを深く愛した家族思いの人であったことが語られていく(90歳を越えた母親も登場するぞ)。1990年代には病魔に襲われて鬱になったりしたらしいが、心臓発作により右手に痺れが残ったため左手で描くことを習得したという話には脱帽するしかない。作品は締め切り日の前夜に短時間で一気に描き上げるなんて話も面白かった。

ドキュメンタリーとしての作りは凡庸で、キャラクターを切り抜いたり後光を当てたりするようなエフェクトのかけかたには少し疑問が残るが、フラゼッタ本人および彼のアートが非常に魅力的であるために観ていて飽きがこない。またニール・アダムスやバーニー・ライトソン、ラルフ・バクシ、ジョン・ミリアス、ボー・デレクなどといった様々な分野の人たちにインタビューをしていて、フラゼッタのアートがいかに多くの人々に影響を与えたかがよく分かる内容になっている。あらためて彼の凄さを実感させてくれる作品であった。

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