「CEMETERY JUNCTION」鑑賞


オリジナル版「THE OFFICE」(もちろんイギリスのやつだ)を作ったことで知られるリッキー・ジャヴェイスとスティーブン・マーチャントが監督した劇場映画。コメディなどではなくとても真面目なドラマだった。

舞台となるのは1973年のイギリスはレディングの片田舎。工場で働く父親(ジェヴェイス)を持ち、労働者階級の生活から逃れ中流になろうと保険会社に入社するフレディと、彼の父親と同じ工場で働く不良少年のブルース、駅で働いていて女の子にはさっぱりモテないスノークという3人の若者を中心に、彼らが親と同じ道を歩むまいとあがきつつも、貧しい家の出であるために大したことが出来ないという閉塞感を、当時の流行曲をふんだんに使いながらノスタルジックにうまく描き出している。

ジャヴェイスが育った土地と時代を描いているため、彼の体験が多分に反映されているほか、当時のイギリス映画のオマージュ(パスティーシュ?)もいろいろ含まれてるんだとか。俺はあまりそこらへんの映画に詳しくないんでよくわかりませんが。カミング・オブ・エイジものとしてはお決まりの展開が多くてクサい場面もあるんだけど、感情的なシーンとかはきちんとツボをおさえて撮ってあるのでシラけてしまうこともない。カメラワークなんかも巧いくて、ジャヴェイス&マーチャントといえばドキュメンタリー風の撮影スタイルのイメージが強かったので、ダンス・ホールのシーンなんかはとてもよく撮れていて驚かされたぞ。

出演者についても主人公の3人およびヒロインが活き活きと演技しているし、レイフ・ファインズやエミリー・ワトソンといったベテランが脇を固めていて手堅い演技を見せてくれる。ただし主人公の父親を演じるジャヴェイスはちょっと浮いていたかな。やはり彼はコメディアンとしての印象が強すぎるので、今回は監督に徹したほうが良かったかもしれない。

あまりにもイギリス的な内容のせいかアメリカでは劇場公開が見送られ、日本においてはいつ観られるのか分からないような小品ですが、十分に楽しめる映画でしたよ。

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