「Doctor Who: “A Christmas Carol”」鑑賞


11代目ドクター初のクリスマス・スペシャル.ここ数年のクリスマス・スペシャルって前後のシリーズの伏線を引きずっててどうも陰気な印象があったんだけど、これは純粋に楽しめる素晴らしいエピソードだった。

話のプロットはエイミーとローリーが新婚旅行で乗り込んだ宇宙船がトラブルに遭い、近くの惑星に着陸する必要が出てきたものの、その惑星(なぜか住民はビクトリア王朝のような暮らしをしている)には気候を操れるガンコな老人がいて、彼は宇宙船の着陸を認めようとしないのだった…というようなもの。

題名が「クリスマス・キャロル」だし、ガンコな老人が出てくるとなれば話の結末は決まってるようなものですが、老人を改心させようとするドクターの奮闘が非常に巧く描かれていた。ターディスで過去に戻って「過去のクリスマスの霊」として少年時代の老人を説得しようとしたり、逆に未来を見せたりするとか。このようにディケンズの「クリスマス・キャロル」を絶妙にアレンジしているばかりでなく、ホロリとさせられるラブストーリーも織り込み、もはや職人芸の域に達した脚本であったよ。

さらに脚本だけでなく話のテンポが非常に秀逸で、過去にいたかと思えば現在に登場するドクターの行ったり来たりが手際良く描かれていて大変面白かった。無駄のない演出のおかげで、1時間という尺ながら下手な映画よりも話に厚みがあったんじゃないかな。過去に戻ってある人物の将来を変えてしまうというのは「ドクター・フー」最大の禁じ手であるはずなんだが、まあそこはクリスマスということで。これらに加えて、ガンコな老人を演じるマイケル・ガンボンの演技も良かったな。

クリスマスという限られたテーマのなかでこれほどのクオリティの話が出てくるようだったら、来年のシリーズ6も相当期待できそうだな。ニール・ゲイマン執筆のエピソードもあるようだし、今から待ちきれない。