「ジョナ・ヘックス」鑑賞


今年度最低の一本との呼び名も高い作品だが、本当にヒドい出来だったよ。

まず驚かされるのが、主人公の設定が原作のコミックと全然違うこと。ジョナ・ヘックスが顔に傷を負う過程も異なってるし、原作ではあんな死者を蘇らせるような能力は持ってないぞ。原作を知らない人のために設定を少し変えるのならまだしも、まったく別物にしてどうするんだよ。

コミック版のヘックスってクセがあるようで実はかなり汎用性のあるキャラクターで、初出誌の「Weird Western Tales」の名に恥じずにガンマンやインディアンはおろかゾンビや怪物と戦ったり、中国人と結婚したり、殺されて剥製にされたり、さらには核戦争後の未来に飛ばされて「マッド・マックス」みたいなことをやったりと(いやホントに)、どんなシチュエーションでも通用するところがあるんだけど、それでもこの映画のヘックスの姿にはかなり違和感を憶えましたね。

話の設定以外のところもみんなボロボロで、カラコレは変だしストーリーは雑だし、ピストルに撃たれた人が2メートルくらい吹っ飛ぶし、やたらと物が燃え上がるし、何でも派手にすればいいってものじゃないのよ。いちばん凄かったのはヘックスが宿敵と戦う最後のシーンで、目の前にいる相手と戦ってるのに、なぜかその相手と「別のところで戦っている」夢のシーンが挿入されてやんの!どうも監督が途中で交代させられたらしく、前の監督が撮影したフッテージを流用したらしいんだが、同じ相手と同時に別のところで戦うなんて演出は普通考えつかないよな。

これに合わせて出演者の演技もダメダメで、ミーガン・フォックスは存在意義がまったく無いし、ジョン・マルコヴィッチは明らかに手を抜いて演技してるし。それになぜウィル・アーネットが真面目な役を演じてるのか。ジョッシュ・ブローリンって最近は当たり役が続いてた印象があったけど、これで一気に評判を落としたね。しかもこの直後に同じウェスタンの「トゥルー・グリット」に出たというのが皮肉というか何というか。

この作品で良かったところがあるとすれば、冒頭のタイトル・シーケンスがアニメになっていて、そこにエデュアルド・リッソのアートが使われてることくらいか。でも「ルーザーズ」のときも思ったけど、コミックが原作の映画だからって無理してコミックの絵を出す必要はないと思うんだけどね。ワーナーは今後DCコミックス作品の映画に力を入れていくらしいけど、こんな映画を作るようでは先が思いやられるなあ。