「FOUR LIONS」鑑賞


以前にも何度か紹介した、ドジで愉快なテロリストたちのドタバタを描いたクリス・モリスの風刺映画をやっと観たのですよ。

映画のコンセプトについてはここに書いたが、要するに一見すると不気味で怖いイスラムのテロリストたちも実は間の抜けた普通の人たちなんですよ、というような内容。話の主人公となるのはシェフィールドに住む4人のイスラム過激派の若者たちで、彼らはカッコつけてテロのメッセージを撮影し、いつか自爆テロを起こして英雄扱いされることを夢見ているものの、何を爆破すればいいのかも思いつかないような呑気な連中で、パキスタンのテロリスト養成所に召還されてもあまりの役立たなさにすぐ追い出されるほどだった。それでも彼らはめげずに昼夜せっせと爆弾作りに励み、新メンバーを迎え入れたりするものの、メンバーの1人が爆弾を抱えて転んで爆死したりと災難続き。そしてついに彼らはロンドン・マラソンで自爆テロを起こそうと決意し、ロンドンに向かうのだが…というようなストーリー。

テロリストたちをステロタイプ化して馬鹿にした内容だったら単なる差別映画になってたろうが、クリス・モリスってもっと頭のいい人なので、しっかり時間をかけてさまざまなテロリストの生活などについて調べあげ、結局のところ彼らは普通の人間なんだよということを描いている。過激な思想を持っている一方で彼らはラップやダンスを愛し、メンバーのリーダーは良き夫で父親なのだ(自爆テロを切望する夫に理解を示す妻というのはちょっと不気味だったが)。テロ計画を成功させようと無い知恵を必死に絞るその姿は、うまいオレオレ詐欺を考えつこうと努力する日本のDQN青年たちのようであったよ。

なおモリス本人は出演してないこともあり、あの傑作シリーズ「BRASS EYE」などとはちょっと違ったタイプのブラックコメディーになってるかな。あっちがシュールで極悪なジョークを連発していたのに対し、こちらは当然ながらストーリー重視になっているというか。会話のあちこちに挿入されてるジョークには腹をかかえて笑ったけど、終盤になって人がどんどん自爆するようになると少し現実味に欠けてきて、ややハリウッド的な展開になってしまったかもしれない。でも意外とペーソスに満ちた終わり方は良かったな。

内容が内容だけにこの映画が日本で公開されるとは思えないが、こういうテロリストのイメージと実情のギャップって、日本のネトウヨにとっての在日とか中国人のそれと通じるものがあるんじゃないの。いずれ外国人が一斉に蜂起して日本を侵略すると怯えてる人がいたらこの映画を見せて、怖そうな人たちも実は愉快な連中なんですよと教えてあげるのもいいかもしれない。

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