「探偵<スルース>」鑑賞


以前から観たかったローレンス・オリヴィエとマイケル・ケインの密室劇。何故か日本やアメリカでは長らくDVDが絶版になっており、イギリス版を買おうかと考えていたらなんとYouTubeに全編がアップされていた。これも日頃の行いのおかげ、ということにしておこう。

郊外の大邸宅に住む老推理作家(オリヴィエ)のもとに美容室を営む青年(ケイン)が招かれる。実は作家の妻と青年は不倫関係にあり、それを知っていた作家は青年を陥れるために自宅の宝石の盗難詐欺の話をもちかけるのだが…というようなストーリー。もともとは舞台芝居で、話の展開から察するに3幕ものかな?

ミステリー仕掛けなのでいろいろドンデン返しなどもあったりするのだけど、あまり謎解きの要素などは強くなくて、邦題にあるような「探偵」も出てこなかったりする。オリヴィエとケインの巧妙かつ辛辣な会話を楽しむ作品といったところか。女性問題からはじまった対決が、いつの間にか階級闘争につながっていくあたりがイギリス映画らしいですね。最初はオリヴィエに手玉にとられていたケインが、徐々に彼に復讐していく流れが巧い。いまでは賢い老人を演じることが多いケインだが、不遜な若者を演じていたこの頃の演技も俺は好きです。

主演の2人以外は出演者が全くおらず、ロケーションも非常に限られている作品だが、オリヴィエが蒐集している人形のショットなどが効果的に絡められ、観ていて飽きない出来になっている。それでも2時間ちょっとという尺は長いと思うけどね。最近ケネス・ブラナーがリメークしたものは89分という出来らしいが、どういう演出がされてるんだろう。あと話の最後に出てくる赤いレインコートの意味を誰か知っていたら教えてください。

ちなみに「This Charming Man」の「A jumped-up pantry boy who never knew his place」ってこの映画からの引用だったのか。