「Grant Morrison: Talking With Gods」鑑賞


スーパーヒーローの歴史と存在意義を説いた著作「Supergods」がこないだ刊行され、9月のDCコミックスのリブートでは中心的役割を務め、ハリウッド映画の脚本も執筆中ということで最近絶好調のコミック・ライターであるグラント・モリソンに関するドキュメンタリー。

彼の生い立ちとコミック業界での経歴を追った内容になっていて、反戦活動家の父親のもとで冷戦の脅威を感じながらグラスゴーで育ち、その恐れを吹き飛ばす存在としてのスーパーヒーローに出会った幼少時代から話は始まる(ここらへんの経験は、こんどやっとペーパーバック化される「FLEX MENTALLO」に反映されてるらしい)。そしてアートスクールを落第になったあとにライターを目指し、それと同時にサイケデリック・バンドで活動し、「2000AD」などで執筆したあとにDCコミックスにスカウトされて「アーカム・アサイラム」で大ヒットを飛ばし、それからさまざまなコミックを手がけていった経歴が説明されていく。

また彼の趣味であるケイオス・マジックにも多くの言及がされ、カトマンズで神秘体験をした話とか、いかにコミックの出来事と現実の生活がシンクロされているかなどについても語られていく。かつてはとてもシャイな若者だった彼が、やがて自分自身を変えていき、ピリっとした服をきてアルコールやドラッグを服用し、コミックのキャラクターと自身を重ね合わせていき、ついにはコミックのなかに自分の分身を登場させてしまうくだりも面白かったな。

相変わらず破壊的なグラスゴー訛りで話すモリソンだが、言ってることはおおかた理解できた。彼以外にもフランク・クワイトリーやフィル・ヒメネス、マーク・ウェイド、カレン・バーガーなどといった業界関係者によってモリソンのことが語られていくんだが、元弟子のマーク・ミラーは出ていなかった。どうも不仲説は本当らしい。

あくまでもコミックに重点を置いているので「The Mindscape of Alan Moore」ほど哲学的ではなく、今までのモリソンの作品とそれに対する彼の考えをまとめた(現時点での)集大成的な内容になっているかな。ただし彼の作品に詳しくないと、語られることはまったく理解できないだろうから入門的なドキュメンタリーではないかな。

さて、次は「Supergods」を読まねば。