ハリウッドのメジャー・スタジオとは無縁に50年代から映画を製作し続け、エログロのエクスプロイテーション作品を作る一方でコッポラやスコセッシといった監督たちに映画業界へのきっかけを与えたB級映画の帝王ことロジャー・コーマン大先生の集大成的ドキュメンタリー。(厳密に言うと正しい意味での「B級映画」は一本も作ってないんだけどね。まあいいか)

あと数日で86歳という年齢ながらも未だに現役で撮影現場に顔を見せ、オフィスで編集作業に目を光らせるコーマン先生の経歴を、本人や家族および彼の門下生たちのインタビューを重ねて語っていく内容になっていて、マーティン・スコセッシやロバート・デニーロ、ピーター・フォンダ、ロン・ハワード、ピーター・ボグダノヴィッチ、ジョー・ダンテ、パム・グリアー、ジョナサン・デミなどといった錚々たる面子が登場するぞ。いちばん多くを語るのがジェック・ニコルソンで、デビッド・キャラダインとかポール・バーテルといった鬼籍に入られた人たちのインタビュー映像も出てくる。ジェームズ・キャメロンが出てこないのは予想してたが、フランシス・フォード・コッポラが出てこなかったのは少し意外だった。

映画業界での仕事を希望して20世紀フォックスで働きはじめたものの仕事に失望して辞め、自分で映画を製作するようになり、持ち前の反骨精神を活かして若者たちが喜ぶカウンターカルチャー的作品を世に出して成功する一方で、ベルイマンやフェリーニ、黒澤明といった海外のアート系映画の配給も手がけて批評家の高い評価も得るようになる。現在の製作者の悩みのタネである年齢指定のシステムも、導入された当時は逆にそれによってR指定の作品の表現の幅が増えたという証言が興味深かったな。

そして70年代に登場した「ジョーズ」と「スター・ウォーズ」という2つのヒット作のおかげでメジャー・スタジオが資金を大量に流入してブロックバスター作品を製作するようになり、資金的に勝ち目がなくなったコーマン作品はやがて劇場からケーブル局やビデオへと活躍の場を映すことを余儀なくされる。これらのことを微笑みながら静かに語りつつも、人種差別に対する自分の信念をぶつけた「侵入者」で初めて金銭的に損をしたり、「イージー・ライダー」への出資から手を引いたことで結果的に大損をしたことを語るときは真剣な眼差しになったりして、映画に対する気持ちはまだまだ若いなあといった感じ。

俺は彼の自伝「私はいかにハリウッドで100本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかったか」を読んでいたこともあり、必ずしも目新しい話は出てこなかったんだけど、インタビューに加えて手がけた作品の映像がふんだんに使われ、コーマンを知らない人にとっては格好の入門書的映画になるんじゃないかな。締めくくりはこないだのアカデミー功労賞の授賞式という格好のシーンで終わるわけだが、「映画は共同作業なので妥協する必要があるんだが、賭けに出ることも大切なんだよ」という彼の受賞スピーチは大変素晴らしいので、それが短くカットされてるのは少し残念だな。とはいえ最後に「ロックンロール・ハイスクール」のラモーンズの映像を持ってくるあたり、うまくツボをおさえたドキュメンタリーになっていると言えるでしょう。

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