「MOONRISE KINGDOM」鑑賞


ウェス・アンダーソンの新作だよ。

舞台となるのは1965年、ニューイングランド地方にある小さな島ニューペンザンス。そこにボーイスカウトの一員としてサマーキャンプにやってきた12歳の少年サムは、島に住む少女スージーと出会って2人は恋に落ちる。そして1年のあいだ2人は文通を続け、つぎの夏に駆け落ちをすることを決意する。こうしてサムはキャンプを、スージーは家を抜け出して両者は落ち合い、山のなかでキャンプ暮らしをしようとするものの、彼らがいなくなったことに気づいたスカウト長や島の警察官、スージーの両親たちが後を追いかけてくることに。さらには巨大な嵐が島を直撃し…というストーリー。

前作「ファンタスティック Mr.FOX」は人形アニメだったので1つの転機になるかな?と思いきや、今回も実にアンダーソン的な作品でございました。メガネ君の初恋というテーマは「天才マックスの世界」を連想させるし、どこか心に陰のある大人たちがいろいろ出てくる点は「ロイヤル・テネンバウムス」に通じるものがあるかな。あの特徴ある色遣いも使われていて実にアンダーソン的。とはいえ今回はなんと16ミリで撮影されていたり、サントラにブリティッシュ・ロックが使用されていないなど目新しい要素もそれなりにあるのだが。

ストーリーは比較的ストレートで、夏休みの課題図書として読まされたような、ジュブナイル向けの冒険小説のスタイルをかなり真面目に踏襲している。少年の主人公が少女に出会い、冒険を繰り広げる夏の物語、といった感じか。とはいえノスタルジアに耽っているわけでもなく、デッドパンなユーモアが随所に散りばめられていたり、登場人物のペーソスが編み込まれていたりといろいろヒネリがあるんだけどね。

サムとスージーを演じる子役たちの脇を固めるのが、アンダーソン作品の常連であるビル・マーレーやジェイソン・シュワルツマン。さらに今回はブルース・ウィリスやエドワード・ノートン、フランシス・マクドーマンドにティルダ・スウィントンといった役者たちが出演してかなり豪華なアンサンブル・キャストを構成しているぞ。みんな手堅い演技でクセのあるセリフを読み上げていて、アドリブとかが入り込む余地はなかったんだろうなあ。

文字通り箱庭のような場所を舞台に、観客不在でストーリーが粛々と進んで行くさまは万事がピッチリと決まりすぎていて、こういうのが合わない人も少なくはないだろう。とはいえアンダーション作品の集大成とも言えるくらいに彼のスタイルが凝縮された作品でもあるわけで、今後は彼の代表作の1つに挙げられることになるんじゃないだろうか。

ちなみにタイトルの「MOONRISE KINGDOM」は最後のシーンで一瞬だけ表示されるので、お見逃しのなきよう。

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