「SOUND CITY」鑑賞


デイヴ・グロールが監督したドキュメンタリー。

ロサンゼルスにあったサウンド・シティという伝説的な録音スタジオを扱ったもので、60年代にヴォックスのショールームを改装して作られたサウンド・シティは(偶然にも)抜群のドラム・サウンドを誇っており、大枚をはたいてカスタムメイドしてもらったニーヴのミキシング・コンソールを装備していた。ニール・ヤングの「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」はここで録音されたほか、スティーヴィー・ニックスとリンジー・バッキンガムのアルバムも製作されていた。そしてスタジオにたまたま来ていたミック・フリートウッドが彼らに出会い、そこでフリートウッド・マックのアルバムが録音されたことからミュージシャンの注目を集めるようになり、トム・ペティ&ハートブレイカーズ、グレイトフル・デッド、チープ・トリックといった有名どころが続々とアルバムをそこで収録していく。

またスタジオのオーナーたちはバンドのマネージメントも行うようになり、リック・スプリングフィールドを発掘して大当たりするものの、その後のマネージメントは成功しなかった(スプリングフィールドの奥さんはスタジオの元スタッフだそうな)。さらに80年代になってからはシーケンサーやサンプラーなどがポピュラーになり、デジタル音源が好まれるようになって、アナログ一辺倒だったサウンド・シティの人気は下火になっていく。しかし90年代になってニルヴァーナがたまたまそこで「ネバーマインド」を録音し、それが世界的な大ヒットになったことから、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやレッチリなどといったバンドがそこを使用することになる。2000年代になってもメタリカやQOTSAなどの有名バンドがアルバムを録音するものの、プロツールズの台頭による製作費のコスト削減の波には勝てず、2011年をもってサウンド・シティは閉じてしまったらしい。

そしてこのオンボロスタジオの思い出をニール・ヤングやスプリングフィールド、リック・ルービンにブッチ・ヴィグなどといった関係者がいろいろ出てきて語っていく。またニーヴのコンソールはその後グロールが買い取って自分のスタジオに設置し、そこでポール・マッカートニーやクリス・ノヴォセリックとセッションをしたりする姿が後半30分くらい紹介されている。

グロールの音楽好きと、他のミュージシャンへのリスペクトはひしひしと伝わってくる内容ではあるものの、登場するミュージシャンの話はどれもスタジオを褒めてるだけで深い話はされないし、観たあとで考えさせられるようなドキュメンタリーではないな。アナログ万歳みたいな内容になるかなと思いきやプロツールズも悪くないよね、みたいな展開になってたし。サウンド・シティの閉鎖のことがきちんと描かれず、そのままグロールのスタジオに話が移るのも不満といえば不満かな。アメリカでは高い評価を受けたようだけど、劇場で金払ってまで観るほどの出来ではないかと。ここに出てくるミュージシャンたちを好きな人なら観て楽しめるし、そうでない人はあまり得るものがないだろうという、まあそんな感じの作品です。