Mar 06

邦題は「ようこそゾンビランドへ」になるんだっけ?アメリカ人が「ショーン・オブ・ザ・デッド」を作ったたらこうなりました、というような映画。良くも悪くもストーリーが一本調子で、良くも悪くもキャラクター設定が皆無だったりする。要するに深く考えずに笑って観ろよ、ということなんだろうけど。
謎の原因により世界中の人々がゾンビになってしまったなか、奇跡的に生き残った主人公は女の子とキスもしたことがない内気な少年だったが、自分なりの生存のルールを身につけ、それに頼ることでゾンビの襲撃から逃れていた。彼は銃とトゥインキーをこよなく愛するタフな男に出会って一緒に旅をするようになり、さらに狡猾な姉妹に遭遇して西部を目指すのだが…というのが大まかなプロット。ただし具体的に主人公たちが何かを目指すといった目的が欠如しているため、90分弱の尺ながら中盤のビル・マーレイが出てくるあたりは結構話がダレていたような。
ウディ・ハレルソンの暴れぶりは面白いし特殊効果もよく出来ているし、笑えるところも多々あるものの、ゾンビ・コメディとしては「ショーン〜」に遠く及ばないかな。あっちはキャラクター設定がしっかりしていて登場人物にきちんと感情移入することができたからね。こちらは主人公がどうにか女の子と仲良くなろうとドギマギする点が面白いものの、ジェシー・エイゼンバーグは「イカとクジラ」や「アドベンチャーランド」で全く同じことをやってたので目新しさはなし(逆に言えばハマリ役なわけだが)。
もうちょっと脚本や演出を練れば傑作になったかもしれないのに、普通のポップコーン映画に留まってしまったのは残念なところ。続編の噂もあるみたいなので、次はもっと熟練した監督に任せればいいんじゃないかと。
ちなみにゾンビ映画をみる度に思うのですが、なんでみんなショットガンを使うんだろう。もっと連射が効く銃のほうが効果的じゃない?猟銃だから入手しやすいということなのかな。
written by Kingink
Feb 27

「ドニ・ダーコ」のリチャード・ケリーが、ジャンル映画のネタの宝庫であるリチャード・マシスンの短編をもとに作ったもの。この原作は既に「トワイライト・ゾーン」でも一度映像化されてるんだとか。
(以下ネタバレあるかも)
舞台は1976年のリッチモンド。ノーマとアーサーの夫妻はウォルターという息子とともに幸せな生活を送っていたが、経済的には困窮していた。そんなある日、彼らのもとにボタンがついた箱が送り届けられる。不思議に思う彼らのところにスチュワードと名乗る、顔に大きな傷を負った老人が現れ、箱に関する話を伝える;「箱についたボタンを押せば100万ドルが手に入る。しかしあなたたちの知らない誰かが命を失うことになる」と。彼の話を不気味に思うノーマとアーサーだが、ついにノーマがボタンを押してしまい…というようなプロット。
1976年当時のデザインのほか画面の色調とかカメラワークから察するに、これって70年代のSF/ホラー映画のパスティーシュになってるのかな。ただああいうのはテレビ東京で90分以下にカットされたやつを観るのが楽しいのであって、2時間近い尺で1つのプロットを延々と映していくのは厳しいものがあるなあ。NASAの火星探査の話とかが絡んできて、意外と真面目なSF映画になるか?と思いきやそうはならず、3つのゲートの選択の意味もよく分からないまま話が進み、どうも微妙なところに話が着地して終わったような。主人公たちが自分たちの運命についていろいろ情報を得ているにも関わらず、あまりなす術がなくて変に予定調和を迎えるのもどうよ。
リチャード・ケリーの映画って観てるときよりもむしろ観たあとの謎解きが楽しいわけで、あの大傑作デビュー作「ドニー・ダーコ」はホームページなどに散りばめられた情報を集めてストーリーを解読していくのが面白かったし、前作「サウスランド・テイルズ」もプロット自体は破綻していたもののあの世界観や結末に関する論議を掲示板とかで読んだりしたんだが、どうもこの作品はあまりそういう気にならないんだよな。微妙に謎解きが劇中で完結されてしまってるせいなのか、あるいは単に興味を惹く謎が無いからなのか。
あと音楽はアーケイド・ファイアの人たちが担当したらしいが、いろんなところで音楽が鳴りっぱなしで俺にはずいぶん耳障りに聞こえた。大げさな曲調も70年代のパスティーシュかも知れないけど、もっと抑え気味でも良かったんじゃないの。音楽が話の邪魔したらダメでしょ。
サスペンスに満ちた描写とかは十分にあるし、決して悪い作品だとは言わないが、リチャード・ケリーの作品のなかでは一番の不発かな。あの人もっと実験的なことをやるべきだと思うんだけど。シリアスでハードなジャンル映画をお求めの型には、これよりも「月に囚われた男」のほうをお薦めします。
written by Kingink
Feb 24

マーヴェルに比べコンスタントに優れた作品を出している、DCコミックスのアニメーション・ムービーの最新版。
DCコミックスのファンならお馴染みのパラレル・アースをテーマにしたもので、別の次元にあるもう1つの地球ではスーパーヒーローと悪役の立場が逆になっており、悪のスーパーマン(「ウルトラマン」という名前だよ)や悪のワンダーウーマンが率いる悪の集団クライム・シンジケートが世界征服を達成しようとしていた。これに反抗した「善人」のレックス・ルーサーは次元移送装置を使い、スーパーマンたちが住む我らの地球へと助けを求めにやってくる。彼の話を聞いたスーパーマンおよびジャスティス・リーグはクライム・シンジケートの魔の手から人々を救うため、ルーサーの地球へと向かうのだが…というようなプロット。
TVシリーズ版「ジャスティス・リーグ」の脚本も手がけていたドウェイン・マクダフィの脚本はテンポがよく、ニヤリとさせられる場面も多く見ていて飽きがこない。戦闘シーンが多くてプロットが少し弱い気もするものの、きちんと押さえるところは押さえて話を盛り上げることに成功している。また演出も素晴らしく、前半の雲の中での戦闘シーンなんかはここ最近のハリウッド映画のアクション・シーンなんかよりもずっと上手く描けてるんじゃないだろうか。
キャラクターの設定もよくできていて、特にマーシャン・マンハンターにきちんとサブプロットを割いたところが良かったな。悪役版のデトロイト・リーグやアウトサイダース、キャプテン・マーヴェル・ファミリーといった非常にレアなキャラクターたちも出てくるぞ。パラレルワールドの大統領を意外な人物がやっていたのも良かったな。なお声優はウィリアム・ボールドウィンやマーク・ハーモンといったテレビ畑の役者が揃っているほか、ジェームス・ウッズなんかも参加してたりする。
これ「NEW FRONTIER」を別とすれば、いままでのDCコミックスのアニメのなかでもトップクラスに入る出来じゃないかな。お薦め。今回はiTunesストアでレンタルしたんだけど、DVD版にはザ・スペクターのショート・ムービーが含まれているとのことなので、それもぜひ拝見したいところです。
written by Kingink
Feb 14

コーエン兄弟の最新作だよ。舞台は1967年のミネアポリス。大学で物理を教えるラリーは物静かなユダヤ系の男性だったが、
・不倫したうえラリーに離婚と立ち退きを迫る妻とその愛人
・職もなくラリーの家に居候をしている兄
・家の土地を侵害している隣人
・試験の結果を上げるよう賄賂をよこす生徒
といった人々によるさまざまな問題に突然として見舞われてしまう。さらに彼の不運は続き、これは彼に対する神のお告げなのかと考えた彼はユダヤ教のラビたちに相談することにするのだが…というようなお話。
ものすごく難解というか、訳の分からない映画だなぁ…。主人公が次から次へと不運に見舞われるのは旧約聖書のヨブをモデルにしているらしいが、他にもシュレディンガーの猫をモチーフにしていることが示唆されていて、「生きているのか、死んでいるのか?」というテーマが底辺にあるみたい。特に冒頭の寓話(?)のところとか。
主人公が不幸な目に遭うとはいえ内容は決して悲劇的なものではなく、真っ黒けっけなコメディ仕立てになってるわけだが、聖書のヨブは最後に幸せを得たのに対し、ラリーの場合は…。これって「世の中の出来事はみんな関係しあっているように見えるけど、そうではなくて全て偶然の産物だよ。自然災害とかも」というオチなの?違う?登場人物とかはコーエン兄弟が子供の頃に知ってた人たちをモデルにしてるらしいが、このどっぷりユダヤ文化に浸かった内容は日本で売るのは難しいんじゃないだろうか。
出演者はラリー役のマイケル・スタールバーグをはじめ、大半が無名の役者で固められていて、俺が知ってたのはファイヴッシュ・フィンケルとアダム・アーキンくらいか。コーエン兄弟の難解な作品といえば「バートン・フィンク」が挙げられるけど、あれよりも演出は地味な感じ。雰囲気は「ファーゴ」あたりに近いかな。俺は使用されている曲などから「ブラッド・シンプル」を連想しましたが。あと部屋の奥に座っているラビの姿は「ディボース・ショウ」のCEOそのまんま。
ちなみにこの映画とはあまり関係ないけど、これだけアメリカの映画とかテレビ番組とか観てても、ユダヤ人の定義というのがいまいち俺には分からないわけで、「ユダヤ教を信仰している」もしくは「母親がユダヤ人」でいいんだっけ?ウィトゲンシュタインの一家みたいにカソリックに改宗したユダヤ人をユダヤ人と呼べるのかとか、あれだけ宗教バッシングをしているビル・マーが「俺は半分ユダヤ人だ」なんて言ってるのを観ると、じゃあユダヤ人って何よ、という気になるのです。こういう曖昧な定義のせいで「世界を牛耳ってるのはユダヤだ!」なんていう陰謀論者の格好のターゲットになってるんだろうか。
ユダヤ人の主人公がひたすらヒドい目に遭う映画ですが、クレジットには「No Jews were harmed in the making of this motion picture.」とありますので皆さんご安心を!
written by Kingink
Feb 12

デビッド・ボウイの息子でもあるダンカン・ジョーンズの初監督作となるSFスリラー。
舞台は近未来。地球のエネルギーの70%は、月面で採掘されるヘリウム3によって賄われていた。その採掘を手がけるルナー・インダストリーズ社の月面基地(ちなみに韓国製)にはサム・ベルという職員がたった一人で住み込み、人工知性を備えたロボットのガーティーとともにヘリウム3の回収・送出などを行っていた。彼の任期である3年がもうすこしで経とうとするころ、月面に出ていたサムは作業用車両を大破させる事故を起こしてしまう。気を失ったあとに基地で目覚めるサム。事故の記憶は彼の頭から消えていた。何かを不審に感じたサムはガーティーには秘密で月面の事故現場へと戻るが、そこで彼は驚くべきものを発見してしまう…というのが大まかなプロット。
出演者しているのが殆どサム・ロックウェルだけというのも珍しいが、地球の家族のことを想いながら孤独に働き、やがて自分の運命を悟ることになる主人公を好演している。あとガーティーの声はケヴィン・スペイシー。
重力の描写などは突っ込みたいところもあるものの、すごく正統なSFスリラーになっていて、どことなく70年代のSF映画を彷彿させるところがあるほか、何かを隠しているガーティーとのやり取りは「2001年宇宙の旅」に通じるものがあるな。謎解きの要素はさほど多くないものの(話の展開が途中で何となく読める)、臨場感たっぷりの演出によって観る人を最後まで引きつける内容になっている。クリント・マンセルによる音楽も控え目ながら相変わらずいい感じ。
これが良質のカルト映画として後々まで語り継がれることになるかはまだ分からないけど、続編(のようなもの)の製作も企画されているようなので、こういう真面目なSF映画の人気がもっと出てくることに期待したいです。
written by Kingink
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