gamechangers
BBCのTVムービー。その圧倒的な自由度をもってビゲオゲーム界に革命をもたらし、驚異的な売上を記録した「グランド・セフト・オート」シリーズを製作したロックスター・ゲームズの内側と、彼らのゲームは青少年に悪影響を与えるとして訴訟を起こした弁護士の攻防を描いたもの。

舞台は1992年のニューヨーク(おれロックスターってエジンバラにあるものだと思ってたが、本部はニューヨークなのね)。「グランド・セフト・オートIII」の爆発的なセールスを受け、ゲーム開発者のサム・ハウザーは早くも続編「バイスシティ」の製作にとりかかる。そしてこの続編も大ヒットを記録したが、ゲームを長時間プレイしていた少年が警官を射殺するという事件が起きてしまう。その少年が「人生はゲームみたいなもんだ」と供述したことからフロリダの弁護士のジャック・トンプソンが興味を抱き、GTAシリーズは青少年に有害な影響を与えるものだとしてロックスターを提訴する。これに対して大手法律事務所の弁護士を雇ってトンプソンの訴訟を退けたロックスターだったが、次に出した続編「サン・アンドレアス」にハウザーが企画していた18禁描写「ホットコーヒー」のデータが隠れていることがユーザーによって発覚されたことで、ロックスターは一気に世間のバッシングを受けることになり…というもの。

これ番組製作にあたってはロックスターから何の協力や了承も得られず、むしろ著作権侵害だとして彼らに訴訟を検討されてるらしいが、よくそんな状況で製作・放送したよな。なお物事の描写は正確ではないと、放送後にもロックスターに批判されてるみたいです。

イギリス人のサム・ハウザーを演じるのはヒゲ面のダニエル・ラドクリフ。映画プロデューサーのドン・シンプソン(俗受けする大作映画を80年代に乱発してた人ね)を崇拝し、受けるゲームの製作のためなら容赦なく部下を残業させてコキ使う人物として描かれているが、なんか薄っぺらいキャラだし、やはりラドクリフが演じると凄みがないのよな。

むしろビル・パクストン演じるジャック・トンプソンのほうが主人公であるかのように描かれていて、狂信的なキリスト教徒なんだけど、近所のクソガキどもの嫌がらせにもめげず、モラルのためにロックスターと戦う人物であるかのように描写されていた。でも実際はもっとアレな人で、劇中でも少し言及されてるがツーライブ・クルーやハワード・スターン、NWA、サウス・パークなどといったグループや番組にことごとくケンカを売ってた経歴があるらしい。最後はロックスターの雇った弁護団の手回しによって法律関係の仕事につけなくなるような描写がされていたが、現実にはフロリダの法廷に自分でいろいろクレームをつけて解雇されたのだとか?

何にせよ「アートが表現規制を打ち負かした!」みたいな内容にはなっていなかった。というか全体に起伏がなくて単調な内容であった。ハウザーとトンプソンが面と向かって対峙するようなシーンはないし、そもそもハウザーがなんでホットコーヒーのコードをゲーム内に残したままだったのかという肝心な点についても説明がなかったのには不満が残る。とはいえ扱っている題材が珍しいこともあり、それなりに見応えのある作品ではあったな。日本でも「ゲーム脳」の人についてもこれくらいの番組は作れるんじゃないですか。

Humans
スウェーデンの番組をリメークしたチャンネル4の新シリーズで、アメリカではAMCで放送開始したもの。

最近は技術の進化を反映してかAI(人工知能)を扱った映画がいろいろ作られていて、「チャッピー」とか「Ex Machina」のほかに、「アベンジャーズ2」もAIが大きなテーマになってますな。このシリーズもAIを持ったロボット(シンセと呼ばれる)が市販され、家事手伝いとか単純労働などの業務を人間に代わって行なうようになった近未来を舞台にしている。

話の登場人物は大まかに3グループあるようで、出張のため家を不在にしがちな母親の代役としてアニタという名のシンセを購入した一家、時代遅れのシンセと生活する老科学者、および特定のシンセを探している謎の男といったところ。第1話では彼らがお互いに絡むことはないんだが、今後はいろいろ話が錯綜していくのかな。

アニタを含む一部の特定なシンセは感情や記憶を持っていることが示唆されており、そうしたシンセを追って捕獲する謎の組織も登場するサスペンスになっている。シンセが人間そっくりで外見からすぐシンセだと判断できないのって実際には不便だろうし、アニタに子供たちがなついてしまい嫉妬する母親とか、SF番組としては前にどこかで見たような展開が続いて決して目新しくはないものの、「Ex Machina」同様に音楽や演出が巧いので観ていて飽きない内容になっている。

出演者で有名どころは「マーリン」のコリン・モーガンか。ヒゲが生えてて最初誰だか分からなかったよ。あと意外にも老科学者役としてウィリアム・ハートが出演している。またアニカはジェンマ・チャンというアジア系の女優が演じてるのだが、アジア人女性って従順な召使いというステレオタイプがあるのかね…?

今後の展開が分からないので評価しづらいところだが、知的なSFサスペンスとして期待できる作品かもしれない。

daredevil-poster
あるいは単に「Daredevil」な。マーヴェルがネットフリックスと組んで世に出すTVシリーズの第1弾。とりあえず1話と2話を観たので感想をざっと箇条書きにする:

・全体的な設定は原作コミックと同じ、というかかなり忠実なほう。
・主人公の赤コスチュームもいずれ登場するようだけど、当初は黒ずくめの服装と覆面という姿で悪と戦っていて、そのデザインおよびストーリーはフランク・ミラー&ジョン・ロミタJr.のオリジン話「The Man Without Fear」をざっくりベースにしている。
・「The Man Without Fear」ってフランク・ミラーの作風がかなり暴力的になり始めたころの作品で、デアデビルがサクサクと人を殺して行く展開はおれあまり好きではないのだけど、こちらのデアデビルもかなり暴力的で、人殺しこそしないもののゴロツキを拷問して情報を得たりしてて、かなり血なまぐさい内容になっている。
・とはいえデアデビルは格闘が意外と弱くて、ゴロツキ一人倒すのにも苦労してるし、第2話ではギャングのワナにはまってボコボコにされてやんの。もうちょっと自分の能力を利用したほうが良いかと。
・能力(視力以外の四感が超人的に優れている)の描写は劇場版に比べるとかなり控え目で、四感を駆使したレーダーセンスの描写などはなし、ただし人の心臓の鼓動を聴いて、その人がウソを行ってるか判断するというコミック通りの展開があります。
・いちおう劇場版やテレビ版のマーヴェル作品と同じ世界を共有しているという設定のようで、「アベンジャーズ」に関連してるようなセリフがちらほら。アベンジャーズが街中で盛大に戦って建物を破壊したおかげで、ニューヨークのゼネコン業界はウハウハだそうな!
・クリエーターは「キャビン」のドリュー・ゴダード。主演のチャーリー・コックスはちょっと老けてる気がするが(髪の生え際…)、赤髪でないことを除けばそんな悪くはない。あとはロザリオ・ドーソンがナイトナースみたいな役で出演してたり。みんなシリアスな演技をしているなか、フォギー・ネルソン役のエルデン・ヘンソンだけが原作通りに愚直なキャラクターを演じていて目立っている感じ。主人公の師匠であるスティックとか宿敵のキングピンなどはまだ登場してません。
・ネットフリックスのシリーズの常として、シーズン全話を一気に視聴してもらうことを念頭においているためか、ストーリーの流れにエンジンがかかるのが遅いような。主人公の生い立ちはフラッシュバックで少しずつ語られ、その能力については明確に説明されたりしてません。ここらへん日本に来た時は視聴者にどう受け止められるだろう?
・いずれシーズン全話を観るつもりなので最終的な判断は置いておくが、劇場版よりはたぶんマシな内容になるであろうものの、地上波のTVシリーズなどと比べて突出して素晴らしい、というわけでもないかな。あとは原作のストーリーをどう料理してくれるかに期待。主人公の母親らしき存在も示唆されてるので、名作「ボーン・アゲイン」とかも映像化してくれるかな?

Spring
※かなりネタバレ注意。

末期ガンの母親の死を看取ったエヴァンは、カリフォルニアのさえない暮らしから離れようと決心し、衝動的にイタリアへと向かう。そして海辺の町をうろついていた彼はルイーズという女性に出会い、彼女に惚れ込んでしまう。しかし彼女には隠された秘密があったのでした…というストーリー。

まあ予告編を観れば明らかなんだけど、これヨーロッパが舞台のラブストーリー…ではなくてホラー映画な。好きになった女の子が実は…というやつで、ルイーズが尋常でないことは視聴者にはかなり早い時点で明らかになるものの、話がかなり進まないとエヴェンはそのことを発見しないため、そこらへんは観ていてまどろっこしく感じられるかもしれない。

あとルイーズの状態については科学的(医学的)な説明が一応されているものの、何かあまり説明になってなかったような。どうせフィクションなんだし、あくまでも幻想的な存在として扱っておけばよかったのに。どうも監督(二人いる)の片方は医学生だったらしく、それでやけに専門的な説明がされているのかもしれない。それよりもイタリアに来て数週間しか経っていないのに、エヴァンが移民管理局に追われる理由がよく分からなかった。観光ビザだって半年は滞在できるだろうに。

このようにストーリー上はいくつかノイズがあるものの、イタリアの美しい光景をバックにした恋物語として楽しむこともできますよ。時々ハッとするような空撮映像もあったが、あれってドローン飛ばしてるのかな。低予算映画でも空中撮影ができてしまう世の中になったのですね。なおスプラッター的な作品ではないが、動物の死骸などが随所に登場するので、そういうのがダメな人はお気をつけください。

他にもいろいろあるんだが、ネタバレになりそうなのでここまでにしておく。その美しい映像などは高い評価を得ているようで、日本でもどこかの会社が配給するんじゃないかな?監督たちの次回作はアレイスター・クローリーの伝記映画になるらしいので、今からそっちのほうにも期待しておく。


最近いろんな映画関連の記事で目にするようになったものに「ベクデル・テスト(Bechdel test)」というものがありまして、これはアリソン・ベクデルが1985年に描いたコミックストリップ(上の画像)での会話が起源らしいが、要するに「その映画はどれだけ女性をまっとうに描いているか?」ということを測るテストだそうな。これは3つの基準から成り立っていて、

・(名前のついている)女性キャラクターが2人以上登場するか
・それらの女性たちはお互いに会話をするか
・その会話の内容は、男性に関するもの以外のことか

というもの。当然ながらより多くの基準を満たしたほうが女性をリスペクトした映画とみなされるわけで、最近の映画をこのテストにかけた結果を表示してるサイトもあったりする。例えば「キャプテン・アメリカ2」ではスカジョ演じるブラック・ウィドーが主役並みに活躍している一方で、女性同士が会話するシーンは無かったし、女性3人が主人公の「The Other Woman」も彼女たちが話すのは男のことばかりなのでテストは不合格、といった感じ。

もちろんこのテストだけをもとに、じゃあ「ゼロ・グラビティ」は女性を尊重してない映画だ!と噛み付くのはお門違いだろうし、アメリカでもこのテストに対する批判があるらしいけど、こういうテストが提唱されることと、そしてテストをパスする映画が極めて少ないこと(半数くらい?)が、ハリウッド映画における男性主義を表しているのではないかと。こないだ発表された「スター・ウォーズ」新作のキャストも女性が一人しかいなかったことが批判されていたしね。このテストは邦画でやったらどういう結果になるだろう。

またこのテストに似たものもいくつか提唱されていて、LGBTのキャラクターへのリスペクト度を測るものなどがあるみたい。他にも「パシフィック・リム」を参考にした、「女性にちゃんと独自のストーリーが与えられているか」を測る「マコ・モリ・テスト」というのも提唱されている。あとは人種をテーマに「ロシア訛りのないロシア系アメリカ人」とか「ちゃんとストーリーに絡んでくるアジア人」なんてのも測れるんじゃないかな。

このテストがハリウッドの男性主義を覆すようなものにはならないと思うけど、こんど映画館に足を運ぶときはこのテストを念頭に置いておくのも、また違った映画の鑑賞の仕方につながるかと。あとは「ウィルヘルムの叫び探し」と、PG13の映画で一回だけ使える「FUCK」探しも念頭に置いておこうね!