「MY ADVENTURES WITH SUPERMAN」鑑賞

米カートゥーン・ネットワークのアダルトスイム枠で始まったスーパーマンのアニメ。

ヤングアダルト向けにクラークとロイスのロマンスを中心にしたもので、従来のスーパーマンものだとベテラン記者のロイスに軽く扱われる新人のクラークという図式が多かったのに対し、今回のロイスはクラークよりちょっと先輩のインターンといった感じで、陰謀論好きのジミー・オルセンとあわせて特ダネを追うもののペリー・ホワイト編集長に怒られてばかりいる。

最近はコミックも実写版もクラークがスーパーマンであることをロイスが知っている(さらには結婚している)設定が多くて、それはそれで面白いのだけど、クラークとスーパーマンとロイスの奇妙な三角関係があった頃の話が今となっては逆に新鮮になったな。今回はロイスが最初からスーパーマンよりもクラークに気があるような描写があるのが面白いです。

クラークは自分のパワーを十分に把握しておらず、第1話では「僕は何者なのだろう」という言葉を連発している。「スーパーマン」という名前もロイスが勝手につけたものだし、クリプトン人としての自分の過去をこれから探索していくという意味で、「スーパーマンとの冒険」というタイトルはロイスだけでなくクラーク自身の冒険も指しているのだろう。なお今作のクリプトン人はどうも悪者だったっぽいことが示唆されていて、今後の大きなテーマになるのかな。

ヴィラン側はレックス・ルーサーは登場しておらず、第1話では電気を操るライブワイヤーがスーパーマンを苦しめていた。さらにはデスストローク(両眼あり)がハンサムな青年として登場するのでファンのあいだでは大きな論議になっているようだが、最後にアマンダ・ウォラーと並んで出てくるあたり、あれNew 52でも短命に終わったTEAM 7なのかなあ。あとは味方側だとベイカー街遊撃隊みたいなノリで現代版のニュースボーイ・リージョンが出てきます。

製作は「THE LEGEND OF KORRA」でお馴染みの韓国のスタジオミール。キャラクターの線がちょっと細い気もするがまあいいや。クラークの声優は実写版「ザ・ボーイズ」のジャック・クエイドで、最近はアニメとかコミック絡みの作品によく出てるな。

ロマンス要素を前面に出した海外アニメって珍しいし、劇場版ではダークな展開が続いていたスーパーマン作品に対してこのような明るい感じの作品が出てきたのは一服の清涼剤といったところで歓迎したいです。今後はスーパーガールを筆頭にいろんなキャラクターも登場するようで面白くなるかも。

「THE GALLOWS POLE」鑑賞

THIS IS ENGLAND」シリーズなどで知られるシェーン・メドウズ脚本&監督で、みんな大好きA24製作のミニシリーズ。

原作になった小説があるらしいが、1760年代にヨークシャー近くの村クラッグ・ベールで起きた贋金事件をテーマにしたもの。かつては紡績業で栄えていた村も産業革命の煽りを受けて没落し、住民は貧困に喘いでいた。そこにデビッド・ハートリーという男が数年ぶりに戻ってくる。彼はバーミンガムで贋金作りの技術を身につけており、その腕前を皆に見せて住民の協力を得る。そして村全体が一攫千金を夢見るのだったが…というあらすじ。

贋金といってもお札が流通する前の話なので、ここで用いられるのは金貨の端っこを少しだけ削り、その金のかけらを集めて溶かして、偽の鋳型にはめ込んで新たな金貨を作るというもの。100枚の金貨から10枚が作れるとか言っていて、効率的なのかどうかはよく分からんけど、日本でも藩ぐるみで贋金作りを行っていたところもあるそうで、古今東西で皆が考えることは似るんでしょう。

史実では関係者がゲロったことで村の企みが知られるところとなり、デビッドたちは逮捕されて絞首刑に処されたそうだが、この番組ではそこまで描かれない。というか3話構成なのだけどペース配分がやけに特殊で、第1話は故郷に帰ってきたデビッドが弟たちと結束し、かつての恋人とツンデレなやりとりをするまで。2話目の途中になってやっと贋金作りの話が出てきて、3話で本格的なプランが組まれるものの、地元の有力者も仲間にしてやったぜ!とみんな喜んで終わるという、意外な話の展開であった。犯罪ものやケイパーものというよりも、バディものに近い感じ?第1話の冒頭、腹を刺されてひとり横たわっているデビッドが死神のような存在に出会うつかみとか、もっとハードボイルドな内容になるかと思いきやそうでもなかった。現代にも通じる、貧しいコミュニティの結束感を監督は描きたかったのかしらん。

出演者はよく知らない人たちばかりで、デビッドを演じるマイケル・ソチャという三白眼の役者は「THIS IS ENGLAND」にも出てたのか。というかあの映画の主役だった少年が立派な大人になってデビッドの弟を演じていて、自分が歳とったことを実感するなど。

シェーン・メドウズの作品としては期待してたものとは違ってたけど、イギリスの(たぶん)あまり知られてない歴史に焦点を当てた興味深い作品。

「MRS. DAVIS」鑑賞

こないだの「POKER FACE」など何気に侮れないTVシリーズを出している米PEACOCKの新シリーズで、クリエーターは「LOST」のデイモン・リンデロフと、「ビッグバン・セオリー」のタラ・ヘルナンデス。

舞台は現代、世界は万能のAI「ミセス・デイビス」の助けによって戦争や飢餓から解放され、人々はイアピースでミセス・デイビスの指示を受けることで幸せに暮らしていた。しかし尼僧として修道院で暮らすシモーヌはミセス・デイビスに接続することをひたすら拒んでいたが、ミセス・デイビスは逆にあらゆる手段を用いて彼女にコンタクトしてくる。それによって修道院は閉鎖され、謎のドイツ人集団にも追われることになったシモーヌはミセス・デイビスと対話することを決意。そして彼女はミセス・デイビスが自らを停止することの引き換えに、伝説の「聖杯」を見つけ出すよう命じられるのだった…というあらすじ。

たぶん意味が分からないと思うが、ほんとにこんな内容です。冒頭の15分で14世紀のテンプル騎士団が登場し、そこから2023年に10年ぶりに無人島から救出された科学者が出てきて、ラスベガスで看板に激突した娼婦の首が吹き飛ぶという怒涛の展開が繰り広げられるのだよ。こないだパラマウント+で始まったキーファー・サザーランド主演のサスペンス「RABBIT HOLE」も、主人公の背景説明などがろくにされないままひたすら急展開が続く内容で、観てる時は飽きないもののなんか疲れてくるのよな。

ただこのシリーズはもっとシュールな内容になっていて、AIに対するレジスタンスの物語、というよりもゲラゲラ笑える展開が実は多かったりする。巨大な虫眼鏡で加熱されてトラックの荷台で爆発するジャムの瓶とか、シモーヌを脅すためにダイナマイトを巻き付けられる愛馬とか。デイモン・リンデロフは前作「ウォッチメン」で原作をうまくアレンジしてシュールなギャグを織り込んでいたが、この作品はタラ・ヘルナンデスのインプットの方が大きいのかな?

「RABBIT HOLE」同様に話の設定の説明はろくにされなくて、第1話ではミセス・デイビスがAIだという説明どころか、その名前も言及されない有様。主人公のシモーヌもただの尼僧ではなく、過去に別の名前で何かしらの活動をしていたことや、今も謎のボスの指示を受け、詐欺を働く手品師たちを撲滅していることが示唆されているのだけど、ここらへんは話を追って詳細が明らかになるのでしょう。たぶん。

シモーヌを演じるのは「GLOW」のベティ・ギルピン。第1話では修道院長にマーゴ・マーティンデイルが出てたがこのあとも出てくるかは不明。後のエピソードではデビッド・アークエットなどが登場するみたい。

今後の展開は全知全能のAIに対するレジスタンスの物語になるのか、世界をまたにかけた聖杯探索の話になるのか、全く予想がつかないものの、何か傑作になりそうな予感がする作品。

「デイリーショー」ゲストホスト所感(その2)

前回に続いてゲスト陣が5週続いたので所感を。

6週目:ハッサン・ミンハジ

番組の出身者ですね。Netflixの彼の番組は未見。ちょっと自己主張が強い感じで、予定されてたゲストがドタキャンしたとかで自分の娘を出演させたのは「へ?」と思ったけど娘さんの顔はうまく隠してました。ロニー・チャンとのアジア人同士の掛け合い(上)は秀逸だったほか、ツイッター文化が嫌になったとかで自分のアカウントをカメラの前で削除したのは面白かった。日々の司会というよりもイベント向けのタイプ?

7週目:マーロン・ウェイアンズ

ウェイアンズ一家の彼。政治的に深いコメントとか殆どできなくて、話すことは自分の出演作についてとかで、ゲストも友人の役者ばかりだったような。ゲスト司会のなかでいちばん無味乾燥な人だった。「レクイエム・フォー・ドリーム」の演技とか好きだったのになぁ。

8週目:カル・ペン

オバマ政権で働くために役者業を一時期中断していたくらいの人なので、政治的なツッコミとかも的確に行えていた。自分のコネを生かしてかバイデン大統領にインタビューしたほか、パキスタンの外相へのロングインタビューもきっちりこなしてて偉い。考えてることの説明を聞くとバイデンってやはり頭良いよなと思う。「デイリーショー」でなくても、何か政治的な番組の司会やればうまくいくんじゃないの。

9週目:アル・フランケン

元SNLのライターだが上院議員も務めた大ベテランなので貫禄はある。共和党のリンゼー・グラハムを招き、腹を割って話させることができるのはこの人くらいだろう。その一方で70歳を超えた高齢なので体力的なキレがないかな。以前にどうでもいいスキャンダルで辞職したけど、また立候補して政治家やってください。

10週目:ジョン・レグイザモ

日本でも名の知られた俳優ですな。ノリもいいし政治的なコメントも無難にこなせる一方で、トランプ起訴や学校での銃撃事件といった大きなニュースには十分深く切り込めてなかったかも。あとは自分のルーツを押し出したヒスパニックのネタが多くてお腹いっぱい。

というわけでカル・ペンとフランケンが良くて次にミンハジとレグイザモ、ウェイアンズはダメダメといった印象。女性ホストが多かった前回より良かったかな…と思ってしまうのは自分の偏見でしょうか。

次回からはロイ・ウッドJr.たちレギュラー出演者が順に司会をやっていくそうで、最終的には筆頭候補のウッドJr.が4代目司会者に選ばれる流れになるのかなあ?でもこのゲスト司会の施策のおかげで視聴率がトレバー・ノアの頃のものを上回ったそうなので、このあともしばらくは司会者が決まらずにゲストで回していくことになるかもしれない。

「LUCKY HANK」鑑賞

こないだ「ベター・コール・ソウル」が終わったばかりのボブ・オデンカークが、早くもまたAMCと組んで世に送り出すTVシリーズ。

主人公のハンクは、ペンシルバニアの小さな街の大学で文学を教えている作家。講義でも生徒に作品を読ませているだけでろくに指導を行わない人物だったが、それを生徒に指摘されたことで逆ギレし、「こんな辺鄙な街の大学に通ってる時点で、生徒も教授も終わってんのよ!」とぶちまけてしまう。これが大学新聞で報じられ、ハンクは学生ばかりか同僚の教授たちからも顰蹙をかうことに。そして教員の代表という立場を解かれることになるのが…というあらすじ。

1997年に出た小説を原作としているらしい。プロデューサーと第1話の脚本がUS版「THE OFFICE」のポール・リーバースタインで第1話の監督がピーター・ファレリーという布陣だがコメディ色は薄くて、いわゆるミッドライフ・クライシスを迎えた中年男性の、地味といえば地味なドラマになっている。主人公が大学教授ということもあり難しい言葉がポンポン飛び交って、主人公のモノローグもかぶさってセリフは多い。

ハンクの妻も教員をやっており、そちらは現況に満足しておらずキャリアのためなら街を出ていくことも厭わない考えのようなので、今後はハンクと妻の軋轢が話の軸になっていくのかな?ストレスのたまったハンクがどこかで暴発することが考えられるものの、今後の展開がどうなるのかよく分からず。まさか生活のためにドラッグを売って犯罪王になるような展開はないだろうなあ。

ハンクの妻に「THE KILLING」のミレイユ・イーノス、大学の学長役に「THE OFFICE」のオスカー・ヌニュネス、あとはカイル・マクラクランも出てくるみたいでキャストはそこそこ豪華。オデンカークの演技を見るのは相変わらず楽しいし、批評家たちの評判も良いものの、やはり今後どういう方向に話が進んでいくのかよく分からないので様子を見ることにする。