謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。

昨年は夏に家を買って引越しまして、引越し先は土地勘のない場所ではないのですが生活のリズムがまだカチッといってない感があって、もうしばらくそれは続くのかな。引っ越しの際に運んだ荷物のなかには読んでない本がたくさんありまして、もういいかげんアーリーリタイアしてこういう本を消費する生活したいなと改めて感じた次第です。どうなるんですかね。

今年は正月から北陸の方で大地震があって、世界中で行われる選挙の結果も個人的にはあまり楽観視できないし、いろいろ大変な1年になりそうな気もしますが、体調に気をつけてやっていきましょう。今年もよろしくお願いいたします。

2023年の映画トップ10

今年はおそらく例年並みに鑑賞していると思うのだが、ハリウッドのストで大作がいろいろ公開延期になったことや、海外のメディアでベストに選ばれている「オッペンハイマー」「Past Lives」「Blackberry」などをチェックできてないこともあり、なんか不完全燃焼になっている感がなくもない。そのため昨年同様にちょっと無理に10本選んだ感もあるが、以下は順不同で。

レッド・ロケット

ダメ男が主人公の映画は他人事とは思えないので点が甘くなるが、ほぼ無名の俳優を揃えた低予算映画ながらテキサスの田舎町の情景を美しく描き、ポルノ業界で再び成り上がろうと無垢に奮闘する主人公とかが非常に素晴らしいのよ。

「イニシェリン島の精霊」

アイルランドを舞台にした映画は点が甘くなる。マーティン・マクドナー作品の集大成的な感じ?不条理劇のようなものとして自分は楽しめた。

「SOMETHING IN THE DIRT」

ラストはいまいちだったというか、どうやって終わったかもよく思い出せないのだけど、それまでに至るオカルトというか怪現象の積み重ねが自分の好物だったので挙げておく。

『Personality Crisis: One Night Only』

今年のスコセッシ映画は「フラワームーン」よりもこっちでしょう!クラブで歌いながら自分の過去を語っていくデビッド・ヨハンセンが渋いのよ。

「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3」

今年のスーパーヒーロー映画はイマイチなものが多かったなかで(でも「フラッシュ」も「マーベルズ」も酷評されるほどの出来ではないと思うが)、きちんと話を盛り上げてトリロジーを終わらせた秀作。ジェームズ・ガンによるDC映画の立て直しにも期待しましょう。

「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」

クリフハンガーで終わる2部作の前編ということで評価しづらいところもあるが、今年は「長靴をはいた猫」および「ミュータント・タートルズ」ともに、「スパイダーバース」前作で開拓された、マンガ的2D表現を多分に用いたCGアニメの傑作が並んだ年であったことは特筆されるべき。

「INFINITY POOL」

クローネンバーグ家では息子が着実に力をつけてきている。まだ荒削りなところもあるけれど、このあとの「スーパーカンヌ」への期待も込めて。

「バービー」

まあ今年大きな話題になってスマッシュヒットを飛ばしたという点だけでも、ベストに含めてよいのではないでしょうか。男性から見るといろいろ痛いというか身につまされる作品であった。

『ザ・クリエイター/創造者』

こういう、「これぞSFアクション」的な作品は好きよ。ニール・ブロムカンプが変な方向に行ってしまった一方で、ギャレス・エドワーズがこういうのを作ってくれて助かる。

POLITE SOCIETY

飛行機のなかで見たのと、思ったよりもアクション要素が低いのがマイナスではあるけれど、それでもこういうイギリスのインド人家庭の映画って好きなのです。

相変わらず散漫だな。あとは「How To Blow Up A Pipeline」「Master Gardener」「君たちはどう生きるか」とかが良かったかも。

「Fargo」シーズン5鑑賞

前シーズンから3年ぶりの新作。新シーズンのたびにこれが最終章だ、みたいなことを言われてる気がするがこれが最後になるかは分かりません。

時代設定がグッと前に遡って1920年代だったシーズン4に対し、今度はグッと時代が進んで2019年のミネソタが舞台。弱気なカーディーラーの夫と結婚しているドロシーは、自宅で暴漢ふたりに襲われて誘拐される。しかしドロシーはサバイバルの達人であり、暴漢の車が警官に職務質問を受けている際に脱走し、そのまま警官を巻き込んでガソリンスタンドで銃撃戦を繰り広げる。暴漢を撃退した彼女は自宅に戻り、夫の前では何事もなかったような素振りをするのだった…というあらすじ。

まだ2話しか観ていないので話の展開がこれからどうなるかとんと分からないのだが、登場人物はドロシーとその夫と子供に加え、地元の有力者でドロシーを敵視している義理の母、悪徳の限りを尽くしている保安官、ドロシーを誘拐しようとした暴漢、ドロシーと銃撃戦に巻き込まれた警官といった、実にひねくれたキャラクターたちが揃って、自分たちの私欲のために行動している。

どうもドロシーは保安官の元妻で、彼女を誘拐した暴漢はその保安官が雇ったらしいことが明らかになるのだが、ふたりにどんな過去があるのか、またなぜ主婦のドロシーが銃火器や罠の扱いに熟練しているのか、などは説明されていない。また保安官が仕事をしくじった暴漢を殺そうとしたことから、逆上した暴漢が保安官たちに反撃するなど、三つどもえの血生臭い争いが繰り広げられていく。

シーズン4は時代設定が昔過ぎたというか、アイリッシュと黒人のギャングの話とかどうも響かないところがあったけど、今回はお馴染みのミネソタ訛りのキャラクターたちが、田舎の寒い夜のなか撃ち合いをするあたり、初期コーエン兄弟のノワールさがあって原点回帰した感があってよろしい。

主人公のドロシーをジュノー・テンプルが演じるのに加え、保安官をジョン・ハム、ドロシーの義理の母をジェニファー・ジェイソン・リーが演じるなどキャストは相変わらず豪華。シーズン4だけ登場しなかった聾唖の殺し屋ミスター・レンチも今回は登場するんじゃないかと勝手に期待している。

ドクター・フー「The Star Beast」鑑賞

というわけでショーランナーにラッセル・T・デイビスが復帰しての新シリーズ。デビッド・テナントも14代目ドクターとして復帰し、コンパニオンにもキャサリン・テイト演じるドナ・ノーブルが戻ってきて15年前くらい前の名コンビが復活している訳だが、4話後くらいのクリスマス特番ではチュティ・ガトゥ(正しい発音はシューティ・ガトワか?)演じる15代目ドクターへの交代が確定しているわけで、デイビスが復帰するにあたってのテストラン的な数エピソードになるのかね。

この「Star Beast」は意外にも、パット・ミルズとデイブ・ギボンズが1980年に出したドクター・フーのコミックをベースにしていて、コミックを脚色したTVエピソードってこれが初かな?夜のロンドンに巨大な宇宙船が着地し、それを調査していたドクターはミープという謎の生物、そしてドナに出会う。ミープがウラースという宇宙人たちに追われていることを知ったドクターたちはミープの安全を確保しようとするのだが…というあらすじ。

年末の夜空に災厄が降ってきて、ロンドンが危険な目に遭う展開はいかにもデイビスだなあという感じ。毎年やってて流石に飽きてたパターンも、10年ぶりくらいに見ると新鮮に感じられます。そのあともデイビスらしい冒険活劇が続き、話がすぐさまグルーヴにはまっていた。前のショーランナーのクリス・チブナルは妙に小難しい話を書いていたので、よいカウンターになってるんじゃないですか。

メインのプロットに加えて、以前にドクターの記憶を失ったことで、ドクターに再会したら死ぬと言われていたドナがどのように彼のことを思い出すのかという問題が解決される。そして一方では、なぜ今回のドクターは10代目と同じ顔を持っているのか?というのが大きな謎として提示されていた。その謎が明かされたとき15代目に代わるんだろうなあ。そしていまのドナは結婚してティーンの娘もいると言う設定で、奇しくもローズという名のその子が、第2のコンパニオンのような立場になるのかな。

ディズニープラスと世界配信契約を結んだことで(だからこれ日本でも観れるはず)、ネズミマネーが流入したのか新しいターディスのセットは駆け回れるほどデカいし、ミープの宇宙船のセットも大きくて製作予算が潤沢になっていることが窺える。あとは肝心のストーリーだけど久々のラッセル・T・デイビス作品としては及第点以上の出来だったので、このクオリティが続くことを願います。

「THE CURSE」鑑賞

日本だと知名度がゼロだけど、カナダ出身のネイサン・フィールダーというコメディアンがいまして、コメディ・セントラルの「NATHAN FOR YOU」という番組で頭角を表した人なのです。いろいろ苦労している小さな商売をフィールダーが奇抜なアイデアで助けようとするこの番組は、そのネタの1つ「Dumb Starbucks」が日本でもちょっとニュースに取り上げられたりしたけど、どんなアホみたいなアイデアでも面白おかしく取り上げたりせず、フィールダーが全く笑わずに真面目に取り組んでいくその姿勢は、リアリティー番組とシュールなコメディが入り混じった実に不思議な番組を作り上げていたっけ。番組で知り合った自称ビル・ゲイツのそっくりさん(あまり似てない)の男性の望みを聞いて、彼の初恋の人を探しにいくシリーズ最終回「Finding Frances」はどこまでがリアリティ番組でどこまでがやらせなのか分からないまま、現実と虚構、笑いと哀しみが錯綜する傑作回としてアメリカでは大絶賛されたのです。その延長線上にあるHBO MAXのシリーズ「THE REHEARSAL」は日本でも視聴できるのかな。

そんなネイサン・フィールダーが、エマ・ストーンおよび「アンカット・ダイヤモンド」のサフディ兄弟のひとりベニー・サフディと組んで作ったのがこの「THE CURSE」で、製作はA24。

話の舞台となるのはニューメキシコ州のエスパニョーラ。ホイットニーとアシャーの夫婦は、そこのヒスパニック系の住民たちにお手頃な家やエコな家を紹介するというリアリティ番組を製作していた。彼ら自身も出演するこの番組の撮影は思うようにはいかず、アシャーはプロデューサーに要請されて、自分を良く見させるため物売りの少女にお金を恵むシーンを撮影するが、その後すぐに少女からお金を取り戻してしまう。怒った少女は彼に「呪いをかけてやる」と言うのだが…というあらすじ。

正直なところ第1話は大きな話の進展がなくて、この少女の「呪い」が実際に効果を発揮するのかも分からず。ただホイットニーとアシャーの番組製作は前途多難だな、という雰囲気は伝わってくる。彼らが撮影しているのはリアリティ番組といいつつも「やらせ」が使用され、ホイットニーとアシャーの住宅紹介もエスパニョーラの住民への善行だと強調される一方で裏ではあやしいビジネスが絡んでいることが示唆されるなど、リアリティとフェイクが入り混じってるあたりがネイサン・フィールダーっぽいのかな。そしてアシャーとホイットニーの父親がお互いのチンコの小ささについて話したり、プロデューサーが過去に手がけた実に怪しげな番組が紹介されたりと、変なところで笑いを取りにいってる部分もあります。

こういうドラマでネイサン・フィールダーが演技しているのは初めて観るので、感情を露わにアシャー役を演じている姿はなんか変な感じ。彼は第1話の監督も務めているが奇妙なアングルからのショットが多いです。エマ・ストーンはヨルゴス・ランティモス作品もそうだが、こういうエキセントリックな作品に出るようになっていくのだろうか。そして番組のノリの軽いプロデューサーを演じるのがベニー・サフディで、普通に演技できるじゃんといった感じ。彼は「リコリス・ピザ」とかにも出演してたのか。あとはコービー・バーンセンなどが出演してます。

まあ正直なところこれからどういう展開になっていくのか全く分からないシリーズではありますが、ネイサン・フィールダーの番組なら観てて損はないと思う。