「ロイヒター・レポート」のウソ



こないだエロール・モリスのことを書いたときに、ロイヒター・レポートについて検索してみたら、未だにあんなのを本物だと思ってる人が多数いるらしくて驚いた次第なのですよ。あれを書いたフレッド・A・ロイヒターに関するモリスのドキュメンタリー「死神博士の栄光と没落(Mr. Death: The Rise and Fall of Fred A. Leuchter, Jr.)」を観れば、レポートの内容がまったくのウソであることはすぐ分かるんだけどね。

ロイヒターの経歴を簡単にまとめるとこんな感じ:

・刑務所の近所に住んでいたロイヒターは電気椅子の修理を目撃したことがきっかけで、より「人道的な」処刑が行えるような電気椅子の設計にとりかかる。
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・「電気椅子が設計できるなら絞首台も設計できるだろう」ということで別の刑務所から絞首台の設計を任される。
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・「電気椅子と絞首台が設計できるならガス室も設計できるだろう」ということで別の刑務所からガス室の設計を任される。(ここらへんの流れは非常に官僚的でバカみたいだが、本当にあったことなのだ)
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・「ガス室が設計できるなら毒ガスの専門家だろう」ということでホロコースト否定派に依頼され、アウシュビッツの跡地に潜り込んでガス室の壁のサンプルを入手。そこから毒ガスの痕跡が発見されなかったことから「アウシュビッツに毒ガス室はなかった」というレポートをまとめる。

もちろん実際のロイヒターは毒ガスの専門家でも何でもないから、彼の毒ガス鑑定は誤ったものであり(壁のごく薄い表面だけを調べなければいけなかったのに、壁の大きな破片を採取して鑑定した)、ロイヒター・レポートなんて何の信憑性もないわけだが、彼はこれでホロコースト否定派のアイドルとなり、日本でもこの評判だけが一人歩きして「ホロコーストは無かった!」なんて言っている奴がいるわけ。もちろんホロコーストについてはいろんな意見があるんだろうが、少なくともこのロイヒター・レポートを引き合いに引き合いに出す奴というのは俺は信用しないね。

ちなみにこの「死神博士の栄光と没落」、ロイヒターの強烈なキャラも相まって非常に面白い作品なのに、日本では山形のドキュメンタリー祭で公開されたくらいでDVDとかが出てないのが残念なところです。

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