「アルゴ」鑑賞


今さらながら観ました。遅れてすみません。

昨日のアカデミー賞では監督賞や主演男優賞にもノミネートされていないのに作品賞を穫ったことについていろいろな説が飛び交っているようだけど、個人的な感想としてはこれが「ハリウッドが活躍する映画」だからだということでして、いつもは脚本のオプション権を値切ったりB級映画のメークをしてるような裏方さんたちが、CIAに頼まれて秘密任務を遂行し、人命を救助するなんて話を見せられたら、アカデミー会員の大半を占める裏方さんたちはそら喜ぶわな。

現実ではハリウッドはおろかCIAも中心的な役割を果たさず、カナダが尽力したことで人質が救出されたらしいが、まあそこはハリウッド映画ですから。古き良きハリウッドを甘ったるく描いた「アーティスト」が昨年作品賞を穫ったのと同じような事例かな。おまけにどちらの映画もジョン・グッドマンが陽気なハリウッドガイを演じているわけですが、ならば彼が映画監督を演じたジョー・ダンテの傑作「マチネー/土曜の午後はキッスで始まる」だって作品賞を穫っても良いと思うのだが、そううまくはいかないようで。

このようにハリウッドが重要な要素となる映画であるものの、イランの場面との話の緩急のつけ方が気になるところでして、冒頭の大使館襲撃とかラストの空港のシーンなどは結果を知っていても手に汗握ってしまう展開が続く一方で、ハリウッドの陽を浴びてダラっとしてるシーンが挿入されると話の流れが断ち切られてしまうような。終盤の電話のシーンも、「撮影現場を横切れない!」ではなくて他に話の盛り上げ方があっただろうに。

出演者は濃いオッサンたちがいろいろ出ていて個人的には大満足。カイル・チャンドラーやビクター・ガーバーなどテレビ畑の人たちが出ているのもいいな。ブライアン・クランストンは「ブレイキング・バッド」が終了したらいま以上に劇場映画で引っ張りだこになるのではないか。あとジェームス・ネズビットが何でアメリカの職員を演じてるんだろうと思ったら、あれはタイタス・ウェリヴァーだったのか。なおベン・アフレックのキャラクターの造形はとても浅いと思ったよ。もっと子供とのつながりを深く描くとか、任務への情熱を見せるかしたほうが「人質を救出して必ず帰る」という感じが出て良かったと思うのだが。

あとは外人(イラン人)の描写についてもなんか腑に落ちないところもあるが、それについては国際情勢などに詳しい人たちがいろいろ解説してるでしょうからここでは省く。あとやはり映画のストーリーボードはジャック・カービーのデザインしたものをそのまま使うべきであった。決して悪い映画ではないが、作品賞に値するかと聞かれるとちょっと考えてしまうな。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です