「THE NEWSROOM」鑑賞


「ソーシャル・ネットワーク」に「マネーボール」、そしてスティーブ・ジョブスのやつと、最近は伝記映画の脚本家という印象が強いアーロン・ソーキンによる、ニュース番組の裏側を描いたHBOの新作シリーズ。第1話の監督はグレッグ・モットーラだった。

ケーブル局のニュース番組でキャスターを務めるウィル・マカヴォイは政治的に中立のスタンスを保ち、自分の意見も口にしない人物であったが、大学の討論会で「アメリカが偉大な国である理由は何だと思いますか?」と質問されたときにブチ切れて「アメリカは偉大な国じゃないんだよ!かつてはそうだったかもしれないけど、いまの世代は最悪だ!」とぶちまけたために大センセーションを起こし、しばらく休業するはめに。そして職場に復帰すると自分のスタッフの大半は別の番組に異動しており、それを見かねた上司で恩師のチャーリーはウィルの元彼女でプロデューサーのマッケンジーを招聘してウィルをサポートさせるのだが…というようなプロット。

ソーキンは以前にもスポーツ番組の裏側を描いた「SPORTS NIGHT」とかコメディ番組の製作陣を扱った「STUDIO 60」とかを作った人なので、また自分の土俵に戻ってきたなあ、という感じ。よってソーキン節が炸裂していて、最初から最後まで出演者が凝ったセリフを喋りっぱなし。「STUDIO 60」ではこのノリに視聴者がついてけなくてすぐ打ち切りになってしまったわけだが、今回はどうなるんだろう。

でも海岸の油田事故を報じるニュースのシーンなどはものすごく緊迫感があって、派手な展開があるわけでもないのにウィルが事故の責任者を詰問していくあたりはジャーナリズムの重要性を巧みに打ち出していて流石に見応えがあったな。スタッフの姉が石油会社に勤めていたために重要な情報がリークされてくるという展開はちょっと都合が良すぎたけど。

主人公のウィルを演じるのがジェフ・ダニエルズで、共演がエミリー・モーティマーやデヴ・パテル、オリヴィア・マン、サム・ウォーターストンと結構豪勢な面子。今後はジェーン・フォンダも出てくるらしくて、リベラル寄りの出演者で固めてんなあ。

例によって全体的に衒学的というか説教くさいところがあって、良くも悪くもソーキンの作品ではある。アメリカの評判も2つに別れているみたいだけど、個人的には結構楽しめた作品でしたよ。ちなみにエドワード・R・マローやウォルター・クロンカイトといったニュースキャスターたちの伝統が劇中で語られるんだが、日本ではそういう伝説的なキャスターがいないのでちょっと憧れますね。

「DALLAS」鑑賞


TNTで始まった、過去に13シーズンも続いた大ヒットドラマの続編。リメークではなく続編だあるところがポイントで、前作のキャストがそのまま出演していたりする。「JR」役のラリー・ハグマンなんて80歳ですよ。日本でも80年代初頭に放送してたのはぼんやり憶えてるんだけどね、ろくに観たことないっす。

話の内容も当然ながら前作を踏襲したものになっていて、テキサスの富豪一家であるユーイング家を舞台に、石油に絡んだ利権とか肉親同士の争いとか男女間の嫉妬とか、そうしたドロドロした展開が繰り広げられるらしいんだが…誰が誰だか全然分からんのよ。各キャラクターの説明もろくにされず、前作からそのまま話が進んでいくものだから、誰と誰が肉親でどういう関係にあるのかもよく分からない次第であった。まあこれは俺の方に問題があるわけですが。

そして話の内容は典型的なナイトタイム・ソープで、ガンを隠す家長とか、かつて恋仲にあった男女とか、怪しい目的を持った女性とか、まあベタな要素がてんこ盛りであったよ。こういうドラマの元祖が「ダラス」であることを考えると当然の展開であるわけだが、どうも自分の好きなジャンルのドラマではないな。

また21世紀になっても石油に固執してるのはいかんと考えたのか、家族の1人が代替エネルギーとしてメタンハイドレートの掘削を中国で行ってるんだけど、それが大地震を誘発する可能性があることがわかり、やっぱりメタンって頼れないよねという結果になったんだが、メタン掘削ってそういうものなんですか?

ベタな内容とはいえ第1話はケーブル局の番組として今年度最高の視聴率を稼いだそうで、やはりアメリカでは国民的な番組なんでしょうね。今回もJRが撃たれたりするのかしらん。一方で日本では前作が3シーズンで打ち切られたとのことなので、この新シリーズも放送される可能性は低いような気がする。

「アイアン・スカイ」鑑賞


フィンランドで「スター・レック」を作った人たちが、また資金集めから始めて長年コツコツと作業して完成させたSFコメディ。前作はクリエイティブ・コモンズ下のアマチュア・ムービーといった感が強かったけど(ただし出来はとてもいい)、今回はフィンランドとドイツとオーストラリアの合作という扱いだし、オーストラリアやニューヨークなどでもロケをしていて大作になったなあという印象を受ける。でも良い意味でアマチュア感覚が残ってるけどね。

舞台は2018年。アポロ計画以来となるアメリカの宇宙船が月の裏側に着陸すると、そこにはなんと第二次世界大戦の際にナチスの残党が秘密基地を作り上げていた。彼らは宇宙飛行士を捕獲し、彼が持っていた携帯電話の技術がナチスの巨大宇宙船「神々の黄昏」号の完成に必要不可欠であることを発見する。そしてこの技術を入手するために、総統の命を受けてナチス高官のアドラーは小型宇宙船でニューヨークに潜入するのだが…というようなストーリー。

話のあらすじはアサイラム社のC級ムービーみたいに聞こえるかもしれないが、アメリカに対する皮肉がいっぱい詰まった意外にクレバーな風刺映画になっていたよ。アメリカの大統領は再選のことしか頭にないサラ・ペイリンだし、彼女の選挙担当にアドラーは気に入られてナチスの選挙宣伝がそのまま取り入れられ、ペイリンの演説にアメリカ国民は大喝采を浴びせたりすんの。ヨーロッパ映画ってこういうセンスがハリウッドと違うよね。IMDBの掲示板などでは例によって「これは反ナチ映画というよりも反米映画では?」と憤慨している人もいるみたいだけど、いやそういう映画なんですってば。

もちろんナチスの気違いっぷりもちゃんと描かれてるし、世界各国の利権争いなども風刺されてるので、そこらへんの最低限の知識は持っておいたほうが楽しめるかと。コメディの部分も秀逸で、「総統閣下シリーズ」のパロディもしっかりやってくれてるぞ。あとナチス総統をウド・キアー御大が演じてるほか、音楽をライバッハが担当してるので格好いいノイズ・ミュージックが突然流れたりと至れり尽くせり。

特殊効果の映像もハリウッドのメジャー級作品に比べれば安っぽさが目立つものの、ちゃんと屋外ロケをやってたりするあたりはザック・スナイダーのグリーンスクリーン映画よりも出来がいいと思うけどね。ただし最後のドンパチ(当然ナチスが地球に侵略してくる)に関しては、「スター・トレック対バビロン5」の総力戦というオタク感涙ものの大バトルを繰り広げた前作に比べると弱冠規模が小さかったかな。また前作同様に戦いの中に意外と真面目なペーソスが盛り込まれていて、最後はしんみりとさせるところもあったな。

ハリウッドの大作に慣れた目で見てしまうと、脚本も演出もどこか物足りない部分があったものの、作り手がみんな頑張って楽しんでいるのが感じられて、とても好感の持てる映画でありました。彼らの次回のプロジェクトがまたファンからの寄付を募ったら、いくらか出そうかな。

「SAVING HOPE」鑑賞


NBCの新作シリーズで、カナダからの輸入品。カナダ製の製作費が安いドラマが放送されるようになると、あー夏が始まったなという気分になりますね。尤もNBCは普通のシーズン中も「THE FIRM」とか放送して視聴率稼ぎを放棄してたわけだが。

チャーリーはトロントのホープ病院の優秀な医師だったが、同じ病院で働く恋人との結婚式に向かう途中に交通事故に遭い、昏睡状態になってしまう。そして気付くと彼は自分の体を離れて精神体として自在に動き回れるようになっており、病院で亡くなった人たちとの霊と話せるようになっていた…というようなプロット。

こういう設定ならば普通は話がオカルトっぽくなるか、「Life on Mars」みたく主人公が必死に現世に帰ろうとするか、あるいはその能力を活かして患者を救うことをしそうなものだけど、何と主人公は突っ立ってるだけで何もしないでやんの。自分を蘇生しようとする恋人の姿を眺めたり、死者の霊と話したりするだけで、何をしたいのかが全然分からないのですよ。別に「ハウス」よろしく毎回患者を救えとは言わないが、単に病院の日常を描くだけならこんな設定は不要だったろうに。

チャーリーを演じるのはマイケル・シャンクス…って「スターゲイト SG-1」の人か。スピリチュアルな雰囲気を出すためか青い光が強調されてるんだけど、CGによるレンズフレアが加えられまくっていて目障りな限り。J・J・エイブラムスの「スター・トレック」以上にフレアがうざったいぞ。

TVムービーとかならまだしも、この設定で1シーズンひっぱるのは相当厳しいんじゃないだろうか。ちなみにカナダってアメリカと異なり公的医療保険が存在しているんだけど、アメリカの視聴者は番組を観ていてそこらへんが気になったりしないのかな。

「BUNHEADS」鑑賞


ABCファミリーの新作ドラマ。「ギルモア・ガールズ」のクリエーターとして知られるエイミー・シャーマン=パラディーノによる作品で、あの畳み掛けるような素早いセリフまわしは健在だぞ。

ミッシェルは才能あるダンサーだったが運に恵まれず、ラスベガスのダンサーとして細々と暮らしている女性。ミュージカルのオーディションも受けられず落ち込んでるところに、熱心なファンであるハベルという男性の求婚を受け、つい承諾してしまう。こうして結婚した彼女たちはハベルの家がある海辺の小さな町に向かうが、そこではバレエの教師をしているハベルの母親が待ち構えており、息子の結婚を好ましく思っていなかった。そのためミッシェルと彼女は反目しあうものの、やがてダンスへの情熱で通じ合って仲良くなるのだが…というようなプロット。

バレエに打ち込む少女たちが出てきてダンスのシーンが多分にフィーチャーされてるあたりは「GLEE」を彷彿とさせるものの、あそこまで派手ではなくてあくまでもストーリー主体といった感じ。ミッシェルを演じるサットン・フォスターってブロードウェイで活躍してる女優ということでダンスの腕前もさることながら、絶妙なコメディエンヌぶりを発揮していてとてもいい感じ。

あとはABCファミリーなのでダンス教室の生徒の少女たちにも焦点があてられていて、「MAKE IT OR BREAK IT」みたいなベタな感じにもならず、女の子たちの情熱とか葛藤とかがうまく自然に描かれてるんじゃないかな。

マイノリティの出演者がいないことと第1話の終わり方が少し気になるけど、個人的にはとても楽しめた番組でしたよ。手慣れたクリエーターによる手堅い作りの作品といった感じですかね。