舞台となるのはアイスランドの小さな漁村フーサビク。ここには世界で唯一の「ペニスの博物館」があり、元教師のシギ・フヤターソン(Hjartarson)が40年近くに渡って蒐集した、ありとあらゆる哺乳類のペニスの標本が、ハムスターからマッコウクジラまでびっしりと飾られていた(つうかみんな骨があるのね)。しかしそんなシギのコレクションにも、1つだけ欠けている標本があった。そう、ホモ・サピエンスこと人間の生殖器(以下、チンコと呼ぶ)である。自分が死ぬ前にどうにかコレクションを完成させたいと願うシギは標本のドナーの募集をかけ、同じくアイスランド人のパール・アラソンより、自分が死んだら標本を献上するとの約束をもらう。しかしそれに対抗して名乗り出たのがアメリカ人のトム・ミッチェルで、「エルモ」と名付けられたチンコ(oh…)を持つ彼は、「世界初の標本となるのはアメリカ人だ!」という考えを持ち、「エルモ」の頭に星条旗のイレズミを施し(oh…)、さらには彼が死ぬ前にエルモを切り取って(!)献上することをシギに提案する。ミッチェルの強引な態度には気乗りしないシギだったが、それでもコレクションを完成させたい意欲は強かった。果たしてコレクションは揃うのか?そして誰のものが献上されるのか?…という内容。
いちおうチンコのタブーの歴史などについても言及され、「遺体に腎臓が1つ欠けてたって誰も気にしないのに、チンコが欠けてたら笑い者にされてしまう」などと語られたりもするものの、あとは献上に関するシュールな展開がひたすら続いていく。カリフォルニアで牧場を営むミッチェルは、エルモ(いちおう「セサミ・ストリート」が出てくる前に妻によって名付けられたらしい)について瞬き1つせずに淡々と語るサイコな人で、エルモの飾られかたについても綿密なプラン(「鏡をつけて下部も見られるようにしよう」)を立てていて、しまいには「エルモを主人公にしたコミックを作ろう!」と考えてケープをまとったエルモが正義のために戦うコミックを企画したりしてるのだが、誰が読むんだよそんなの!エルモのエンバーミングにも興味を持ってイタリアの医師にも相談したりするのだが、女医さんが「これは国際的なオペレーションであり、標本が縮む前に処理をして迅速にアイスランドに届けなければなりません」などと真面目に語るのが非常にシュールであった。
一方のパール・アラソンは若い頃にアイスランドの僻地を冒険した有名人で、300人もの女性と関係した性豪であり、96歳になっても昔の女性の写真を眺めながらニタニタ笑ってるようなスケベ爺さん。しかしシギが「標本は最低でも5インチ(約13センチ)あること!」という方針を持っているため、加齢によってどんどん縮んでいく彼のチンコが、果たして5インチあるのか?という謎が話にスリル(?)を与えている。もうちょっと若い時にサイズを測るため石膏型をとろうとするものの、担当者が素人だったため見事に失敗する映像などは抱腹絶倒ものですよ。シンシア・プラスターキャスター(知ってる?)に頼めば良かったのに。
出てくる人たちは男女を含めてチンコについて真剣に語っており、それが題材とのギャップがすごくて笑いを禁じ得ないわけだが、シギ自身が病気によって体調を崩したため、どうにか生きているうちにコレクションを完成させたいと願う姿が、意外にも後半になって話にペーソスを与えている。なおミッチェルも「自分は性欲と決別したいんだ」と真面目に語るシーンがあるものの、誰もあなたの言うことは信じてませんから!エルモのコスプレ写真なんか送るなよ!
題材が題材だし、モロに見えているシーンもあるので日本ではまず公開されないだろうが、観ていて非常に楽しめるドキュメンタリーであった。みんなも5インチ以上あったら標本にして飾ってもらおうぜ!