J.G.バラードの小説「残虐行為展覧会」を映像化した作品「ATROCITY EXHIBITION」を観た。監督はジョナサン・ワイス…って誰だ。音楽はジム・フィータスことJ.G.サールウェルが担当。
俺が原作を読んだのはもう10年以上前だから、内容はまるで覚えていない。そもそもプロットらしきものが存在しない実験小説なんだけどね。映画版でも確固としたストーリーはなくて、失踪した科学者とその上司、およびフェム・ファタール的な女性を軸に、いかにもバラード的な車の衝突、コンクリートの構造物、整形手術の光景、戦争の犠牲者、そして無機質なセックスなどの映像が重ねられていく。もちろんロナルド・レーガンもちょっと顔を出してます。
とにかくこれらの映像の使い方が非常に素晴らしいんですよ。一歩間違えればアート気取りのスノビッシュな作品になりかねなかったはずだが、印象的な風景やストック映像を巧みに混ぜ合わせ、独特な雰囲気をもった音楽をのせることで低予算の映像作品とは思えない出来になっている。観ていてものすごく不穏な気分になるんだけど、それでも目を離すことができない映像美だとでも表現すればいいのかな。あと原作には当然なかった、チャレンジャー号の爆発事故の映像を効果的に使っている点も興味深い。
題名通りグロい映像もあって万人に勧められる作品ではないものの、隠れた傑作であることは間違いない。