実話に基づいた映画だが、以下はネタバレ注意。これ出来事について触れないと何も書けんので。
・内容は金融関係の用語が飛び交って、かなり難しかった!確かに難しそうな金融の仕組みになると、マーゴット・ロビーやアンソニー・ボーデインやセレーナ・ゴメスが直接観客に語りかける形で丁寧に説明してくれるのだけど、あくまでもアメリカの観客を相手にした説明をしてるわけですね。日本だと全く馴染みのない金融商品もあるし、翻訳のところで何割かの情報がどうしても失われてしまうから、字幕になるのは複雑な略称の羅列になってしまうわけで。話の展開自体はさほど複雑ではないものの、何でそこで支払いが必要になるのかとか、どこでどうしたら利益が出るのかとか頭のなかで整理するのが大変だったぞ。
・監督がコメディ出身のせいか編集のカッティングがこまめで速く、セリフの量も多いので字幕が追いついていない部分もあったような。気の利いたセリフも訳しきれてないのがもったいない。あと当時のテレビ番組などがいろいろ挿入されているわけで、アメリカのカルチャーについてある程度の知識がもとめられるかも。とにかく画面上の情報量が多いため、気楽に鑑賞できるような作品ではなかった。
・キャストは比較的豪華で、アスペルガー気味の非常識な金融マンを演じたクリスチャン・ベールの演技がさすがに巧いのですが、やはり怒れる常識人を演じたスティーブ・カレルのほうに観る側は感情移入できるかな。ライアン・ゴズリングはまあ普通、ブラッド・ピットはプロデューサーとして相変わらずオイシイ役を演じてんなあと。あとレイフ・スポールはそろそろまた体重に気をつけたほうが良いかと。実話がそうだったために仕方ないのですが、これだけのキャストいながらも出会って共演するシーンが少ないのが残念。
・冒頭でベールのキャラクターが不動産の暴落を見抜いて、実際に暴落が起きるから主人公たちがガッポリ設ける…という単純な話ではなく、本来なら儲かるはずが金融システム全体が大きなイカサマのうえに成り立っているために逆に窮地に立たされるという展開が面白かったな。でも邦題にあるような「華麗なる大逆転」を期待してはいけないよ。
・万人向けの映画ではないものの、金融のノンフィクション、および監督の金融業界への怒りをここまでエンタメに昇華できたのは立派ですな。ここで描かれた諸々のことが決して解決されたわけではなく、またいつか起きるかも知れないというのが怖いところですが。