こないだ「ニューヨーク・ドール」を観たときからずっと頭に残ってるシーンが1つ。ドールズの再結成ライブのためにロンドンへ向かったアーサー・ケインが、ライブ前日のランチョン(昼食会)で出された料理を「今まで食べた料理のなかで最高にうまい」といって喜んで食べていたという場面。それなりに高級なホテルでのランチョンだったんだろうが、報道陣を含めた大勢の人々が出席し、バンドのお披露目も兼ねた騒々しい場でふるまわれる料理なんてたかが知れてるはず。それでも最高の料理だったと言うことは、ドールズでの現役時代も含めて今までよほどロクなものを食べてなかったんだろうなあ、と深い印象を受けた次第です。
これに関連して思い出したのが、日本でも知られたシェフ兼TVパーソナリティーのアンソニー・ボーデインが、昔ジョニー・サンダースにメシを奢っていたという話。非常に面白かった「AVクラブ」でのインタビューから引用すると:
AB:(…)俺らはライブのチケットとかがタダで欲しかったんで、ジョニー・サンダースをレストランに招いて食事を奢っていた。彼らはレストランではとても居心地悪そうにしてたね。いつもひどくビクついてたんだ。どのフォークを使えばいいのかとか、赤ワインと白ワインを両方飲んでいいのか、といったことにね。まあ18歳でヤク中だったらそんなもんだろう。俺も18のころはレストランのことなんて何も知らなかった。
(…)彼にはいろいろ用意してやった。フォーマルな、ロック流のタキシードで正装して彼は来店したんだ。教会のネズミのごとく静かでね。いろんなグラスや飲み物をどうすればいいのか分からなくて、ひどくオドオドした彼の姿は面白かった。
他愛もない話かと言えばまあそうなんだが、有名なロックスターだからって高級レストランでの食事に慣れているとも限らないわけで、食事に関するこういう話を聞くと、とても微笑ましい感じがせずにはいられないのです。