「スパイダーバース」再見

アカデミー賞を獲ったというのに日本ではまだ一般公開されてない「スパイダーマン:スパイダーバース」ですが、先にUSのデジタルダウンロード版を購入してしまった。特典映像はそんなに多くはないけど製作陣のコメンタリーや未公開シーンの映像(大半が絵コンテ程度だが)などもあって、どうやって作品が完成していったかが分かるのが興味深いのです。また情報量が圧倒的に多い作品なので、最初に観たときは呆気にとられて気づかなかった細かい演出も、繰り返しみるといろいろ気づくので面白い。とりあえず演出で気づいたことと、未公開シーンの解説を羅列していくが、ネタバレを防ぐために白文字とします。ロード&ミラー&監督3人のコメンタリー付き映像はまだ観てないので、あとで追記するかも。

演出で気づいたこと:

最初のほうでピーターが「俺はドローンにぶつかった〜」とか語るのに対し、ラストでマイルズもドローンに直撃されている。この作品、このように繰り返す演出が多いよな。マイルズがピーターに足払いをくらったのち、クライマックスでピーターにやり返すところとか。

最初にメイおばさんの秘密基地で故ピーターのコスチュームを眺めるとき、マイルズの顔の高さがコスチュームの半分にしか達してないのに、後にヒーローになる決意のついたマイルズが基地に向かうと、コスチュームとマイルズの顔がぴったり重なる演出がいいね。

ヒーローになる証として高層ビルから飛び降りるマイルズだが、そのとき窓ガラスを破るのは、彼がまだ壁にひっつく能力を完全にマスターしてない証拠でもある。それでも彼は跳び、そのときのBGMが「What’s Up Danger?(どうした、危険)」。

おれ登場人物のなかではメイおばさんが一番好きかも。何も知らないかと思われた人物が、実はいちばん分かっていて理解力がある、という展開がいいのよ。

ドクター・オクトパスが「友人は私のことをリブと呼ぶけど、敵はドック・オックと呼ぶわ」と語るのに対し、メイおばさんは彼女のことをリブと呼んでいる。二人の関係は…?

キングピンの妻子の画風がビル・シェンキビッチのアートっぽいのは以前にも書いたが、どうもやはりシェンキビッチ本人がこの作品に関わっているらしいですね。

スパイダー・ハムの最後のセリフ「That”s all, folks」はご存知のように「ルーニー・チューンズ」の締めのフレーズで、マイルズがそれを受けて「法的に大丈夫か?」とツッこんでるのはそのため。このフレーズ、日本語で定番の訳ってあったっけ?

これ世界的には公開されたの12月半ばで、スタン・リーの死の僅か1ヶ月後ですからね。みやげ屋のシーンでスタン御大が出てきたときに観客は動揺してたが、最後にしっかりと追悼のメッセージが入れられていたのを見たらほんとウルッときてしまった。

クレジット後のおまけ映像、ジョナ・ジェイムソンの声をあててるのもスタン・リー。ジェイムソンを演じたいという彼の夢はここに実現したのだ。

未公開シーン解説:

未公開シーンというか未公開バージョンは冒頭からスパイダー・ハムの短編アニメから始まるのだが、これはホームビデオ用の演出なのか、本当に劇場版もそう始まる予定だったのかよく分からず。

マイルズのルームメイトとしてガンケ・リー(「ホームカミング」のネッド・リーズ君だとお考えください)が登場し、彼といっしょに能力のトレーニングをしていく内容になっていた。マイルズの世界のスパイダーマン映画(演じるのはイケメン役者だがスパイダーマン本人がコメンタリーをつけている、というメタな作品)をふたりで観て、スパイダーマンの能力を勉強していく、という仕組みだったみたい。

微妙に下ネタが多くて、天井に手がくっついたまま降りられないマイルズのパンツがズリ落ちてフルチンになったり、異次元から跳ばされてきたピーターもパンツを履いてなくて、変質者扱いされて警官に逮捕されている。

アルケマックスの研究所まで、ピーターとマイルズは旅客機に乗って向かっている。途中でピーターがコスチュームの洗い方などを伝授するシーンあり。帰りは劇場版でもみんな長距離バスで帰ってますね。

他のスパイダーマンたちにダメ出しをくらって秘密基地を去ったマイルズを、ピーターが追いかけて慰めるシーンあり。ここで後の重要ワード「Leap of Faith」が語られている。

ヒーローとして覚醒し、高層ビルからのジャンプに成功するマイルズだが、その後はミスをしてトレーラーの荷台に激突している。これ勢いを完全に削ぐシーンなので、カットして正解だった。

キングピンのパーティーに潜入するスパイダーマンたち。実はノワールの抱えている蓋つきトレーのなかにスパイダー・ハムが隠れている。マスクだけしてあとは全裸で、リンゴをくわえた豚の丸焼きに扮していた。ちょっと悪趣味。

ラスト、マルチバースが縮小していくのを見たドクター・オクトパスは、その魅力に酔いしれてその中に自ら身を投じている。続編への伏線になるか…?

まあどの未公開シーンも興味深い一方で、過度に説明的であったり冗長な長さのものが多いので、カットしたことは正解でしょうね。