公開したばかりなので感想をざっと。いちおうネタバレ注意。
・日本の宣伝では「全編ワンカット」であることが謳われてるが、当然そうではない。作品を観ればわかるが、少なくとも2回は主人公が意識を失うことでカットが生じているし、それ以外にも劇中のあちこちで巧妙にカメラを隠すことなどで、細かいカットが入っているらしい。とはいえ長回しを多用した、切れのない演出を売りにした作品であることは間違いないのですよね。
・そこで出てくる疑問としては、そういう演出って意味あるの?ということでして。実際にワンカットで撮影された「ヴィクトリア」を観た時も思ったが、そういう長回しを使うことで話が面白くなるのでなければ、やる意味あるのかなと、映画製作で一番偉いのは編集者だと見なしている自分などは考えてしまうのです。
・1つの解としては、これがすべてリアルタイムで進む作品であり、ストーリーの最初から最後までを通して見せることで、主人公の与えられた任務の性急さを表すこともできるだろう。でもこの作品は、もっと夜になるまで出発を待つという選択肢が最初に与えられているわけで、果たしてこういうワンカット撮影をする必要が最も適切だったのだろうか。
・とはいえ撮影自体は撮影監督がロジャー・ディーキンス御大ですからね、さすがに見応えのあるものにはなってましたよ。曇り空から夜になっていく光景は、同じくメンデスと組んだ「スカイフォール」を彷彿とさせたな。
・話の内容はいま公開中の「彼らは生きていた」を事前に観てれば、第一次対戦中のイギリス軍の生活がどんなものだったかがわかるので、より深く楽しめるんじゃないでしょうか。主人公が若者とはいえ、なんか全編に渡ってナイーブすぎるのが気になったが(敵兵を捕獲したら武装解除を真っ先にやれよ、とか)、実際の兵士もあんなものだったんだろうか。
・主役のジョージ・マッケイって、「パレードへようこそ」で若手のゲイを演じてた彼か。まだスター然としてなくて垢抜けないルックスが、未熟な兵士役によく似合ってたかと。コリン・ファースやマーク・ストロング、カンバーバッチなどは殆どカメオ出演みたいなものでしたが、セリフが多いストロングがその分印象的でした。
・決して悪い作品ではないものの、「パラサイト」に比べれば内容が凡庸であることは間違いないので、こっちがアカデミー作品賞を獲らなくて良かったな、と改めて実感させてくれるものでした。