邦題は「すばらしき父さん狐」になるのかな?ウェス・アンダーソンによるストップモーション・アニメ。かつてニワトリ泥棒をやっていたミスター・フォックスは妻が妊娠したことをきっかけに泥棒稼業から足を洗い、新聞のコラムニストとして妻子とむつまじく暮らしていた。しかし大きな木の中にできた家に引っ越したとき、そこから3つの裕福な農家を眺めているうちに昔の意欲がムクムクと沸き上がってきてしまい、それぞれの農家に泥棒に入ることに。3件とも泥棒に成功して有頂天になるフォックスだが、これにより激怒した3人の農家たちはフォックスを銃撃し、彼は尻尾を失ってしまう。さらに農家たちがフォックスたちの住む木を爆破したため、彼らは命からがら地中に逃げることに。しかし農家たちの追撃はそこにも迫ってきていて…というようなお話。
ウェス・アンダーソンってあの若さで良くも悪くも自分のスタイルを確立させてしまった人で、前作「ダージリン急行」は話の展開があまりにもそのスタイルにはまっていて食傷気味だったんだが、今回はストップモーション・アニメという技法を用いることで新しい境地に辿り着いたのかな…と思ってたら彼のスタイルは健在でした。微妙に噛み合ないシュールな会話とか、どこかぎこちない家族関係、60年代のブリティッシュ・ロックといったアンダーソン作品ではおなじみの要素があちこちで顔を出すことに。「子供に尊敬されない父親」が主人公だというのは「ロイヤル・テネンバウムス」や「ライフ・アクアティック」に似ているかな。ただし「アクアティック」ではそのマンガ的な展開が空回りしていることが多かったのに対し、今回はまさにマンガ(アニメ)という手法をとったために、どんな滑稽な展開があっても違和感なしに観れてしまうところが強みだな。
アニメの出来は「コラライン」とかに比べると多分にぎこちなくて、教育テレビとかで見かけるものをちょっと立派にしたような感じ。12fpsで撮影されたというのもチープさに影響してるのかな。でも物語の素朴さにはよく合っていると思う。ミスター・フォックスの声をあてているジョージ・クルーニーも、いかにも本人そのままといった感じで気楽に演技しているところが良かったな。
アニメ作品とはいえ、内容はむしろ30〜40代あたりのお父さんに受けるんじゃないかな。日本で宣伝するのはなかなか難しそうだ。まあこれでウェス・アンダーソンは今までと違った映画を作ったわけで、それが彼の今後の作品にどう影響するか期待したいところです。