巷で評判が良いようなので観てみた。主人公のオリーブは男性経験のない地味な女子高生だったが、親友に見栄を張って「私、こないだ男の人とヤっちゃったのよ!」とウソをついたらその話が学校中に広まり、すぐに彼女は腰軽女として見なされてしまう。最初はそれに困惑していたオリーブも、逆にその立場を利用してゲイやデブの同級生たちとも「ヤってあげた」という噂を流すことにより、彼をカッコ良く見させるという行いに出る。しまいには授業で習っていたホーソーンの「緋文字」の主人公よろしく赤い「A」の字を胸につけて学校に行くのだが…というような話。
観ていて何がいちばん気になったかというと、ストーリーや演出とかではなくて、主演のエマ・ストーンが声にドスが効いているということでして、ハスキーボイスなんてものじゃなく、クラシック映画のヴァンプ女優のような非常にどっしりとした声をしてるんだよな。おまけに顔つきもヴァンプ女優っぽいので「男とヤったの」なんて言われても「ウソでしょ?」ではなく「何人と?」と聞いてしまいそうな雰囲気があるんだよな。演技自体はかわいらしいので決してミスキャストというわけではないんだけど、あの声はなかなかインパクトがありましたよ。
ストーリーはアメリカの高校における階級制度をうまく逆手にとった内容になっていて、クリスチャンの生徒たちの迫害を受けながらも、普通ならモテない生徒たちを「男にしていく」主人公の姿がよく描かれていたかな。ただし一発芸的なネタを薄くのばしたような感があったことも否めない。これが映画でなく、60分尺のテレビ番組に凝縮にされたとしたら大変素晴らしい作品になっていただろうに。また主人公の両親がとても物わかりのいいリベラルな人たちとして描かれていて、主人公の振る舞いについても何も心配してなかったのには拍子抜けしたな。ふつう教師や同級生よりも両親のほうがこういうことについて心配しそうなものだけどね。
なお出演者はエマ・ストーンのほかにもトーマス・ヘイデン・チャーチやスタンリー・トウッチ、リサ・クドロー、さらにはマルコム・マクダウェルといった豪華な面子が揃っている。こないだの「YOUTH IN REVOLT」もそうだったけど、ティーン・コメディの脇をベテラン俳優で固めるのが流行ってるのか?
「緋文字」などの古典文学を意識した言葉の使いまわしや、ジョン・ヒューズ作品への言及があったりと、日本人にはちょっととっつきにくい内容にはなっているのですが、笑えるところも多々あったし、決して悪くはない作品でしたよ。