アントン・コービンが監督した、ジョージ・クルーニー主演の映画。
プロの殺し屋で武器職人でもあるジャックはスウェーデンで何者かに命を狙われたことでイタリアに逃亡し、知人の手を借りてカステル・デル・モンテという小さな村に潜伏することになる。そこで彼はライフル銃の製作にとりかかるほか、クララという娼婦と恋仲になる。しかし彼には危険が迫っていた…というような話。
サスペンスなんだかアクションなんだかメロドラマなんだか、いまいち何をやりたかったのかよく分からない作品。いちおう銃撃戦とかカーチェイスがあるんだけどアクション映画というわけでもないし、ユーロピアンなアート映画としては世俗的すぎるというか何というか。どうもストーリーが起伏に乏しく、ダラついた感じがするんだよな。加えて音楽はヘルベルト・グレーネマイヤーという人気歌手が始めて映画音楽を担当したものらしいが、どうも扇情的というか大げさな感じがして好きになれなかったよ。
ストーリーには原作があるらしいけど、良心の呵責に苛められる殺し屋とか、心優しい娼婦なんてのは他の映画で山ほど目にしているので新鮮さはなし。仏頂面で黙々と仕事をする主人公を演じるジョージ・クルーニーの演技は悪くないんだが、あくまでも「演技しているクルーニー」にしか見えなかったぞ。もっと無名の役者を起用したほうが話のリアリティが増したんじゃないの?ストイックなキャラクターのようで風俗通いだけはマメに行っているというのもよく分からんし…。その一方で娼婦のクララを演じたヴィオランテ・プラチドは非常に美しいですよ。「ゴッドファーザー」でマイケル・コルレオーネの最初の妻を演じた女優さんの娘らしいが、大胆な脱ぎっぷりを披露してくれてます。
なお写真家のコービンが撮った映画ということもあって、夜の路上とかイタリア山地の風景とかの映像は非常に美しい。コービンの写真ってセピア色のものとかピンボケした人物写真のイメージが強かったんで、このような風景映像が撮れるのは意外だったけどね。それがやはり大げさな音楽によって台無しにされてるのが残念なところです。あとイタリア語が話されるシーンにおける英語字幕がものすごく小さかったんだけど、なんだあれ?
もっとアートハウス・シネマ的なものを目指せば良かったんだろうけど、代わりにテレビ東京で昼間にやりそうな程度の作品になってしまったのが惜しいな。