実はゴア・ヴァービンスキーの映画観るのってこれが初めてだったりする。彼が監督してジョニー・デップが主役の声を演じたCGアニメ。
演技好きなペットのカメレオンが、飼い主の車から放り出されて砂漠をさまよっているうちに動物たちの暮らす町に辿り着く。そこで彼は自らを「ランゴ」と名乗り、持ち前のハッタリと運の良さに助けられて町の保安官に任命され、町の貴重な水の蓄えを盗んだ連中を追跡するのだが…というような話。
最初はリアルに人間が出てくるものの、いつの間にか動物たちが人間のように暮らす町が出てくるわけだが、そういう細かいところにいちいち突っ込んでられないほど話が奇妙というかぶっ飛んだ映画だったよ。主人公のランゴの性格からして何かヤバいくらいに天然だし、話の展開も荒唐無稽。プロット自体はシンプルなのでストーリーが破綻しないで済んでいるものの、ピクサーやドリームワークスのアニメとは明らかに違った出来のものになっている。あの2社の作品のルーツがディズニー作品にあるとしたら、こっちのはもっとブラックなルーニー・チューンズやハンナ・バーベラ、あるいはもしかしたらラルフ・バクシの作品にあるんじゃないかと。
そしてプロットは「チャイナタウン」やマカロニ・ウェスタンをベースにしているし、「ラスベガスをやっつけろ」とか「地獄の黙示録」とかのパロディもあって、対象年齢は40代以上か?といった感じ。ランゴ以外のキャラクターの造形も結構グロテスクで、ヒロインにいたっては日野日出志のキャラクターみたいだったぞ。よって子供向けだとかジョニー・デップのオサレな映画だと思って観にいくとドン引きすることになるかもしれない。
でもアニメ映画としては比較的長尺ながら話のテンポも良いし、アクションシーンもすごくスピーディーであるほか、アニメーションの出来も夜や夕方のシーンが素晴らしかった。個人的にはかなり楽しめる作品でしたよ。今までのアニメ映画とは異なったところを突いていて、これを作ったILMはピクサー/ディズニーとドリームワークスに次ぐ第三の勢力になるかも(まあ他にもブルースカイとかもありますが)。
カメレオンのランゴになんでヘソがあるのかとか、「西部の精神」がなぜあんな格好をしてるのかとかいろいろ意味不明のところもありますが、それを補ってありあまる勢いを持った怪作。