「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクター博士を扱ったNBCの新シリーズ。
時系列的には「レッド・ドラゴン」のちょっと前の頃が舞台になっていて、若い女性ばかりを狙った連続殺人犯を逮捕するためにFBIのクロフォード捜査官は現場を退いていたウィル・グレアム捜査官に助けを求め、さらに精神科医のハンニバル・レクター博士にも捜査への協力を依頼する。こうしてグレアムとレクターは殺人犯を追っていくものの、レクターには暗い秘密があって…という設定。俺は「レッド・ドラゴン」とか「ハンニバル・ライジング」を観てないので、映画の設定とどのくらい異なってるのかはよく分かりません。
題名は「ハンニバル」なんだけど主人公はむしろグレアムのほうで、アスペルガーの傾向があり人とうまく接することができない反面、殺人現場のプロファイリングを完璧に行うことができ、被害者に感情移入してしまう暗いキャラクターとして描かれている。ハンニバルはそんなグレアムを翻弄する謎の男という役回りで、当然裏では人を殺してパクパク食べちゃったりしているわけですが、第1話に出てくる殺人鬼と彼の関係がいまいち良く分からなかったような?
地上波ネットワークとはいえグロいシーンも必然的に出てくるのですが、ショッキングな映像に走ったりはせず、色調なども抑え気味で70年代のアートムービーを観てるかのよう。視聴者はハンニバルの正体を知っているのに劇中の登場人物はそれを知らない、という前日譚にありがちなまどろっこしい状況をどこまで引っ張れるかがシリーズ存続のカギになるだろうな(いまNBCを観ている人がどれだけいるのか、という問題もあるが)。ウィキペディアによるとショウランナーのブライアン・フラーは「シーズン5くらいでクラリス・スターリングとか登場させたいなー」みたいなこと言ってるようですが、あなたの手がけたシリーズでシーズン3まで続いたものってありませんから!
グレアムを演じるのはヒュー・ダンシー…ってクレア・デーンズの旦那か。そしてハンニバルを演じるのが「カジノ・ロワイヤル」のマッツ・ミケルセンで、主役2人をイギリス人とデンマーク人を演じてるあたりが、アメリカ人が主役はれない最近のアメリカのテレビ業界を象徴しているような。ただミケルセンは英語がちょっと拙いような気がするんだけど、どうなんだろうね。そんな2人をまとめるクロフォード捜査官を演じるのがローレンス・フィッシュバーン。TVシリーズ出るのが嫌で「CSI」を降板したような印象があったんだけど、そうでもなかったのかな。
殺人鬼ものとしては「フォロウィング」や「BATES MOTEL」などよりもサスペンスを丁寧に描いていてよく出来ていると思うのですが、今のところ視聴率もそこそこという感じらしいので、どのくらい長続きできるかは何ともいえない作品だな。